仙女の花嫁修行
 花嫁の意味なんて無かったのなら、これまで犠牲になってきた女の子達は一体どうなったのだろう?
 みんなも気になっていると思うけど、これまで生け贄となった人達の死が、意味の無かったものだと突き付けられるのが怖くて聞けないのかもしれない。
 それを考えると心が少し重くなる。


 雨でびしょびしょになった花嫁衣装から着替えた所で大広間へ戻ると、宴会が始まっていた。
 颯懍は礼や施しなどは一切要らないと帰ろうとしたのだが、村の人、取り分け私の家族が引き止めて、半ば無理矢理に参加してもらっている。
 私としてもきちんと御礼をしたいし、聞きたいこともある。それに、《《ある頼み事》》もしたいと思っていたので、引き止めてくれて都合が良かった。

「仙人様、改めてお礼を言わせてください。この度は助けて頂き、ありがとう御座いました」

 私の父と長老に、次々と酒を注がれている颯懍の所へ行って、深々と頭を下げた。

「うむ、間に合って良かった。あともう数刻行くのが遅かったら、海に沈んでしまうところだったからな」

 海に沈む……。そう言えばあの時、潮が満ちてきて溺死するかと思ったんだった!
 という事はもしかして、これまで犠牲になった子たちは……。

「これまでの花嫁は、あの洞窟で溺れてしまったのでしょうか?」

「そうだろうな。敖潤は水の中でも呼吸出来るから関係ないが、ただの人間ではそうもいかん。ずっと昔にもさっきした説明をして、鈴も渡してやったんだか、どうなっておるのだ?」

 半分睨み付けられるような視線を受けた長老が、ビクンっと身体を震わせた。
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