仙女の花嫁修行
「確かに娘との別れは辛いもの。ですがこの子は女の子ですから。いつかは他所へやって手放さなければならないとは思っておりました。それがまさか、龍神様へ嫁にやるとは思っておりませんでしたがね。あの時は本当に、胸が張り裂けそうになりました。でも今回は違います。娘が何処かで元気にやっていると思えば、我々家族も、ちっとも寂しいなんて思いませんよ」

「この子は人一倍正義感が強くて。龍神様の嫁にだって、自分から立候補してなったんですよ。放っておいたら自分の命を捨てて、誰かを助けて仕舞うような子です。それなら仙人になってもらった方が、私たち家族としても安心ですよ。娘の命の恩人の貴方様ならば尚更です。どうか娘を弟子にしてやって下さい」

「仙人様、お願いします! 姉ちゃんも一緒に連れていってください!!」

 家族のみならず、宴会に参加していた村の人達までもが次々と頭を下げて、お願いしてくれた。
 みんなの気持ちが嬉しくて、目頭がじわっと熱くなる。

 「お願いします」の大合唱に、ついに颯懍が折れた。盛大にため息をついて酒をあおると、わざとらしく盃を乱暴に置いて叫んだ。

「だあああっ! くそっ! 分かった。弟子にしてやる」

「あっ……ありがとうございます!!」

「良かったね姉ちゃん」

「うん、泰然もありがとね」

「姉ちゃんは仙人様の嫁にでも行ったと思って過ごすからさ! な、母ちゃん」

 弟の冗談に、颯懍がブーッと鯨の潮吹きのごとく、酒を吹きだした。

「あらまぁ、そう考えておけば気が楽だわね」

 うふふふ、あははは、と笑いあっているみんな。

 顔を赤く染めてむせている師匠。
 

 何はともあれ私、明明は、仙女になるべく旅立ちます!
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