仙女の花嫁修行
2.師匠の師匠に御挨拶
 月日が経つのは早いもので。

 颯懍を落としてから、もとい、弟子入りしてから20年がたった。

 今日も今日とて私は、滝に打たれて精神統一。



 仙骨を持ち修行中の者を道士と言うのだけれど、私は修行をしつつ旅をしている。


 旅の目的地は仙人達が暮らす場所――桃源郷。


 そこはとある山奥に入口があると言うのだが……。真っ直ぐに向かうのかと思いきや、馬に乗ることも車に乗ることも無く歩いてまわり、あちらこちらで寄り道をしては道草を食っている。

 そんな旅も悪くないと思えるのは、颯懍が何気に人助けをしたり、施したりしているから。
 私を助けてくれた時のような仰々しい事はあまりなのだけれど、サラッとサクッと誰かに手を貸してあげる姿は、本当にカッコイイ。

 そして、もうひとつの要因。それは私の身体の時が止まったから。

 修行を初めてから徐々に体の成長と老化が遅くなり、ここ十年くらいの見た目が変わらなくなったことから、完全に止まってしまったようだ。
 だから時間を気にすることが無くなって、のんびりとした旅でも焦らない。


 しばらく滝に打たれていたら、集中力が増してきた。今なら行けそうな気がする。

 滝壺から抜け出して、足の裏を水面につける。

 身体の中にある陰の気と陽の気を()り合わせて一つにし、力を足へと流し込んで水を踏んだ。

 いつもならそのまま水面を突破ってしまうところが、今回は違う。
 足に力が入って、地を足で踏むように水面の上を歩くことが出来た。

「ぃっ……いやったーー! 師匠!! やりましたよ! ほら、水面を歩いて……っっ!!」
< 15 / 21 >

この作品をシェア

pagetop