仙女の花嫁修行
さっきまで滝の裏側に居たはずなのに、目の前に広がる景色は全く別。
まるで壁のように空高くそびえる巨大な山が一つと、周りにも切り立った山がいくつもある。空気が澄み精気に満ち溢れ、ここがあちら側とは別物だと言うのを肌で感じとれる。
「これが仙界……桃源郷」
仙人が住む場所を人々は桃源郷と呼ぶ。そこは桃の花が咲き乱れる美しい場所なのだと言うが、本当に桃の花があちこちで咲いているようで、桃色の塊がいくつも視界に入ってきた。今って、桃の花の季節だっけ?
「おいっ、早くどかぬか」
感慨に耽っている私の下で、颯懍が呻いた。
突き飛ばして、そのまま颯懍の背に跨ってしまったようだ。
「ご、ごめんなさいぃ!」
颯懍はパンパンと服を叩いてから空を仰ぐと、ピィーーっと指笛を吹いて甲高い音を鳴らした。
何が起こるんだろう?
そのまま黙って一緒に空を見ていると、遠くから猛スピードで飛んで来た鳥が1羽、足元へと舞い降りた。
三本足に金色の羽根。翼を広げた姿は、私が両腕を広げたよりも大きい。ただ、ざっくりと言うとカラスの様な見た目をしている。
「金烏だ。崑崙山の頂上まで歩いて登るのは骨が折れるからな。運んでもらう」
指示された通りに金烏の足を掴むと、いとも簡単に2人の人間を持ち上げて飛び立った。
運ばれている最中、颯懍が追加で説明をしてくれる。
「さっきの場所はただの人が通っても、ただの瀑布の裏だ。神通力を使いながら壁を押すと、こちら側に来る事が出来る」
「それでは私一人でも、自由に行き来出来るんですね」
「そうだ」
「師匠のお家も仙界にあるのですか?」
「さよう。崑崙山から南東へ少し行った辺りの山にある。挨拶が終わったらそこへ帰るつもりだ」
話をしているうちに、金烏が見事な御殿の前へと降下して行く。
降ろしてもらうと颯懍は、金烏の口の中にポイッと1粒、丸薬を投げ入れた。颯懍特製、滋養強壮に効くと言う仙薬だ。恐らく運賃代わりという事なのだろう。満足そうに「カアァ」と鳴くと、金烏はそのまま飛び去って行った。
まるで壁のように空高くそびえる巨大な山が一つと、周りにも切り立った山がいくつもある。空気が澄み精気に満ち溢れ、ここがあちら側とは別物だと言うのを肌で感じとれる。
「これが仙界……桃源郷」
仙人が住む場所を人々は桃源郷と呼ぶ。そこは桃の花が咲き乱れる美しい場所なのだと言うが、本当に桃の花があちこちで咲いているようで、桃色の塊がいくつも視界に入ってきた。今って、桃の花の季節だっけ?
「おいっ、早くどかぬか」
感慨に耽っている私の下で、颯懍が呻いた。
突き飛ばして、そのまま颯懍の背に跨ってしまったようだ。
「ご、ごめんなさいぃ!」
颯懍はパンパンと服を叩いてから空を仰ぐと、ピィーーっと指笛を吹いて甲高い音を鳴らした。
何が起こるんだろう?
そのまま黙って一緒に空を見ていると、遠くから猛スピードで飛んで来た鳥が1羽、足元へと舞い降りた。
三本足に金色の羽根。翼を広げた姿は、私が両腕を広げたよりも大きい。ただ、ざっくりと言うとカラスの様な見た目をしている。
「金烏だ。崑崙山の頂上まで歩いて登るのは骨が折れるからな。運んでもらう」
指示された通りに金烏の足を掴むと、いとも簡単に2人の人間を持ち上げて飛び立った。
運ばれている最中、颯懍が追加で説明をしてくれる。
「さっきの場所はただの人が通っても、ただの瀑布の裏だ。神通力を使いながら壁を押すと、こちら側に来る事が出来る」
「それでは私一人でも、自由に行き来出来るんですね」
「そうだ」
「師匠のお家も仙界にあるのですか?」
「さよう。崑崙山から南東へ少し行った辺りの山にある。挨拶が終わったらそこへ帰るつもりだ」
話をしているうちに、金烏が見事な御殿の前へと降下して行く。
降ろしてもらうと颯懍は、金烏の口の中にポイッと1粒、丸薬を投げ入れた。颯懍特製、滋養強壮に効くと言う仙薬だ。恐らく運賃代わりという事なのだろう。満足そうに「カアァ」と鳴くと、金烏はそのまま飛び去って行った。