仙女の花嫁修行
「ほう、颯懍の弟子に。それなら明明よ、そちからも誰か娶るよう言ってやってくれ。弟子としても、師匠が真人になってくれた方が嬉しいじゃろう?」

「え? ええ……それは」

 もちろん。と言いかけたところで颯懍が割って入ってきた。しかも、意味不明なセリフで。


「明明が嫁候補です!!!」


「は?」

 突拍子もなさ過ぎる内容にあんぐりと口を開けて視線を移せば、背中をギュッと抓られた。
 なななななに?!

「明明は俺好みなんです。まだ道士ですから結婚は出来ませんが、仙籍に入ったら行く行くは、と思っております」


 はあぁぁぁぁぁ?!


「なんと、そうであったか。弟子を嫁に……。まああまり勧められる方法では無いが、禁じられておる訳でもなし。もちろん明明も了承しておるのじゃろ?」

 了承どころか、そんな話しは一言も聞いてませんけど!
 意義を申し立てる前に、背中を更に強く抓られた。颯懍からは「合わせろ」とでも言いたげな目線が送られてくる。

「はっ、はい!! 勿論です!」

「そーか、そーか! 相思相愛ならば儂も言う事なしじゃ。確かに儂がこれまで選んだ女仙とは、ちと嗜好が違ったようじゃな。ふむ、颯懍はこの様な女性がタイプであったか。いや、なに、400年も待ったのだ。そちが仙女になるまでの時間など、これまでの時に比べれば大した長さでも無い」

「は、はぁ」

「明明よ、颯懍の為にも頑張って修行に励むのだぞ? こりゃあ俗世で言う花嫁修業……いや、『花嫁修行』じゃな!! ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ!」

 笑いながらバシバシと背中を叩いてくる老君と、ははははと空笑いしている颯懍。

「あははははは、冗談がお上手で」

 まさかの展開に、私も一緒に笑うしかないでしょ、これは。
< 22 / 126 >

この作品をシェア

pagetop