仙女の花嫁修行
3.師匠の秘密
 眉目秀麗と言う言葉がピッタリな青年から、突然の告白と求婚。ただの村人其ノ壱だった頃にされていたら、きっと浮かれていたに違いない。

 でも今は違う。

 弟子入りすると決めたあの日、仙になれば子供は望めないと言われた。だから年頃の女なら一度は考えてみる色恋のアレコレは、全て封印して修行に励んで来たと言うのに。


「どーいう事ですか!?」

 辺りは薄暗くなり人気は無いので、誰かに聞かれる心配もないだろう。老君の御屋敷から歩いて家へと向かう道すがら、颯懍に詰め寄った。こんな目にあっているのだから、師匠だとか上下関係だとかは脇に置いといてもいいでしょ!

「はぁぁ、だから師匠の所へ行くのは嫌だったんだ。すまぬ」

「謝罪の言葉が聞きたいんじゃありません。何がどうなってあーなるんですか? 結婚って何ですか? 仙人に結婚制度があるなんて知りませんでしたよ」

「ふむ、まずそこから説明しよう。人には精気という物があるのは分かるな?」

「はい。男なら陽の気、女なら陰の気ですね」

 人の体の中には精気と言うパワーがある。

 精気の量は生まれた瞬間が最大値。新たに作り出すことは出来ないので歳をとるにつれて減って行き、やがて精気が尽きると寿命も尽きる。これが老衰による死だ。

「この精気を仙骨に溜め込んだり、作り出したりする事の出来るのが仙だ」

「それも既に知っています」

 仙が特に常人より骨が多いとか形が違う訳でもなく、見た目は普通。でも仙骨と言う特別な骨を持って生まれると修行を積めば、その骨を入れ物として自由に精気を出し入れ出来るようになる。
 更に子を成せない体となる代わりに、そのエネルギーは全て精気へと変換されるのだ。だから女なら月経が来なくなる。
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