仙女の花嫁修行
「それが……そのー……」

「何ですかモジモジして!! 私には当然、理由を知る権利があります。きちんと説明して下さい」

 颯爽と人助けしてしまう、あのカッコイイ師匠は何処へやら。口ごもって小さくなっている。
 でもここで、はぐらかされる訳には行かない。
 ぐぐぐぐっと詰め寄ると、観念したようにボソッと一言。


「……たたない」

「……はい?」

 人生で初めて聞いた単語(ワード)に、思考が追い付かない。たつって何? 立つ? 建つ? 断つ??

「だから、勃たないんだ。アソコが」

「……………………」

「ぅおいっ!! あからさまに憐れむような目で見るな!」


 いやいやいや、だってさ。20年間も野宿をしながら一緒に生活してきたんだもん。大事な部分は除くにしても裸ぐらい見た事ありますよ、そりゃ。
 あの身体だから、さぞかし立派な逸物が付いているんだろうに、まさかの不能(役立たず)とは。

「こほんっ。えーと、その事を大師匠はまだ知らないって事ですね?」

「言える訳なかろう。まだ5つの時、口減らしに山へと捨てられた俺を拾ってくれた時から、ずっと老君様には大事に育てて貰ったんだ。まあ大事に育てられ過ぎたせいで、こうなったとも言えるが」

「と言いますと?」

「老君様にココへ連れてこられて修行し始めると、何故だか女仙達が、俺にやたらと構ってくるんだ。最初はまだ俺が幼い子供だから、母性本能ってやつをくすぐられるんだと思っていた」

 なんかこの後の展開、何となく分かるぞ。

「もしかして、師匠の体……じゃなくて陽の気目当てだったとかですか?」

 ゲンナリとした顔で、返事代わりのため息をついた。
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