仙女の花嫁修行
 ですよねぇ。子供の頃から整ったお顔立ちだったんでしょうよ。成長して更に修行を積んで仙人になったら、是非とも嫁に迎えてもらいたいって思うよ、それは。仙人に歳の差とか関係ないんだろうし。

「蛇に睨まれる蛙とでも言えばいいのか……。取って食われないかと心配した老君様は、俺を仙籍に入れるまでの間、女仙達から完全隔離したんだ。桃源郷では暮らせないから道士時代は殆どを老君様と2人、俗世の中で過ごした。そういう訳で俺は女と言うのがものっ凄い苦手になった」

 だから颯懍はちょいちょい、ジジくさい喋り方をするのか。幼い頃からずっと老君様と2人きりで過ごして来たなら無理もない。


「それは納得ですね」

「俺が成長して力をつけたのを見計らって、老君様が桃源郷へ戻ろうと言ってきた。その頃ちょうど、俺が弟子入りした位の時期に西王母様の弟子になった道士の女がいてな。俗世だと同期と言う感覚に近いかもしれん。そやつに引き合わされて仲良くなった。何せ隔離されてきたせいで女と喋る機会なんて無かったから、それはもう楽しくてな」

 西王母様は神人の一人で、老君様と同じく崑崙山に住んでいる。何でも女仙達を束ねる御方なのだとか。

「その女仙とある日、まぁ、そう言う雰囲気になって、そう言う事になった訳だ」

 うんうん、分かる。女なら一度は夢見る展開だ。初めて心を許した女性と……いいっ!いいそのシチュエーションっ!!

「俺も初めての事で、何をどうしていいのかわからなくてな。それで言われたのが『痛いじゃないっ!この下手くそ!!』。しかも血が出てるだとか最低だとかとコテンパンに言われて……」

「うわぁ……」

「自分で言うのも何だが、俺はそれまでずっと周りから天才だ何だのと褒め称えられて、実際何をするにも困った事がなかった。特に仙術や精気の操り方については、あっけない程簡単に習得して、他の者が出来ない事を不思議に思うくらいだった」

 颯懍は仙籍に入れられる時、いきなり僊人の位だったらしい。普通は地仙から地道にコツコツと積み上げて行くものを神僊からスタートしたと言うのだから、道士時代から只者ではなかったのだろう。
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