仙女の花嫁修行
「初めての挫折、ですか」

「さよう。何でも出来てしまって天狗になっていた俺の鼻は、あの時見事にへし折られた。以来、俺のアソコはウンともスンとも言わなくなったんだが、老君様には早く房中術をする様にと会う度にせっつかれて、仕舞いには寝所に女仙まで送り込まれてな。俗世へ下りてずっと逃げていた」

 ただでさえ、そう言う類の話しはデリケートな物なのに……。初恋相手には罵られて不能になるわ、師匠には追い詰められるわで、精神的ダメージは計り知れない。

「もしかして桃源郷へ帰ってきたのって私の為、ですか?」

「まあなぁ。お主もそろそろ仙になれるようになる頃だろう。紹介するのなら、大師匠にあたる老君様を選ぶのが道理だ」

 仙籍に入れるか否かを決めるのが三清ならば、まずその三清の内の誰かに自分の存在を知ってもらわなければ話しにならない。
 私の強さと善行の具合いを見計らって、桃源郷に帰ってくる決心をしてくれたんだと思うと、なんだか申し訳ない。

「案ずるな。お主が仙籍に入る時には、適当な理由を付けて回避するから」

「それって俗世で言う、『婚約破棄』って事では無いですか」

「はは。仙人の世界では俗世のようにそう大事でも無い。女の経歴に傷が付くなんて思わなくても大丈夫だ」

「うーん。でもそれだと師匠は、ずっとこのままですよ。それでも良いんですか?」
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