仙女の花嫁修行
「そんな事言ってもだなぁ」

 私の経歴に傷が付くとかはどうでも言いにしても、それでは根本的な解決にはならない。
 やがて時が来て私が仙籍に入る事になったら婚約破棄。そして颯懔はまた逃げ回る生活。
 ただの人なら『死』と言う終わりが来るけれど颯懔は仙だ。終わりがない。それって結構つらくないだろか。

 それに颯懔が房中術をするとパワーアップするって事だよね?となると颯懔に助けて貰える人が増えるという訳で。困っている人が減って幸せな人が増える……


 颯懔のアソコが復活する=人類の幸福


 という事なのでは?!

 ちょっと極論すぎるかもしれないけど、間違ってもいないはず。

 そう考えるといてもたってもいられない。俄然、メラメラとしたやる気が沸き立ってきた。

「わかりました師匠。私がどうにかして師匠のアソコを勃たせてみせます!」

「はあ? お主、何を言って……」

「人類の幸福がかかってるんです!これをやらずして何と言うのですか」

「人類の幸福……? 言っている意味がさっぱり分からん 」

「それに師匠への善行も、善行としてカウントされますよね? 師匠は大舟に乗ったつもりで気楽に構えて下さい!」

「いや、俺は了承してな……」

「了承も何も、『嫁候補』なんて嘘を言い出したのは師匠じゃないですか。拒否権なんてありません。責任とってもらいます」

 ビシッと颯懔に向かって指差すと、怯むように後ずさった。

「う゛っ……それを言われると何も言い返せぬ」

「よーし! 忙しくなるぞーー! エイエイオー!」

「不安だ……ものすごく」

 ガックリと肩を落とした颯懔の背を押して、スキップ混じりに家路へと急いだ。
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