仙女の花嫁修行
「それは良いが、何だってあの仙薬にこだわるんだ? 随分と熱心に研究しているようだが」

「ふっ、兄さん、分かってませんね。いいですか? 俗世の人にとって子孫繁栄は、お金儲けくらい重要な問題なんです。高貴な身分なら跡取り問題、一般家庭だって働き手が必要です。ですから女もそうですが男にも頑張って貰わないと。そう言う悩みを抱えている男性って結構いるんですよ」

「可愛い顔して、明明は言ってくれるねぇ」

「嫌じゃないでしょ?」

「そりゃもちろん。次回作も期待してるよ」

 イヒヒヒと2人、悪人面をして笑い合う。

「うおぃ、そこの2人。さっきからコソコソと楽しそうにして、随分と仲良くなったようだのぅ」

 後ろからぬうぅっと颯懍が現れて、心臓が飛び出そうになった。

「良いじゃないですか。まさか妹弟子が出来るなんて思ってもみなかったから、嬉しいんですよ。俺は一生、男くさい屋敷に閉じ込められたまんまかと憂いていたから尚更に」

「帰ったら嫁がいるだろう」

「それとこれとは別物です。な、明明」

「ね、兄さん」

 私も姉はいたけど兄はいなかったから、こうやって「お兄さん」なんて呼べる人が出来たのは嬉しい。使用人のみんなも良くしてくれるしで、桃源郷での暮らしは楽しい。

「良いか、天宇。あくまで明明は兄弟弟子だからな」

「? 分かってますよ。可愛い妹です」

「分かっているならよろしい。男衆はとっくに工房へ向かったぞ。お主もさっさと行かぬか」

「はい」

 持っていた皿を急いで棚へと仕舞うと、天宇は工房の方へと向かって行った。
< 32 / 126 >

この作品をシェア

pagetop