仙女の花嫁修行
「いいねぇ、あんた泰然って言ったっけ? 気に入ったよ。今夜はお姉さんがたっぷり可愛がってあげよう」

「妖なのに、紅花さんからは全く穢れを感じませんけど」

 人間が仙骨を持つと仙人になるが、人以外でも仙骨を持って生まれてくる場合がある。人外の仙骨持ちを妖と言い仙人同様、精気を操って神通力を使い不老の身体を手に入れられる。


 妖も概ね仙人と同じなのだが、大きく違うのは精気の取り込み方。

 仙人であれば修行を重ね自らが生み出す精気を高めたり、或いは自然の中から取り込んだりするのだけれど、ほとんどの妖は修行するなんてまどろっこしい事はしない。

 肉体を食べる事によって人がもともと持っている精気を取り込むのだ。だから妖は普通の人間よりも遥かに多くの精気を体内に宿す、道士や仙人が大好物。精気ごと骨をバリバリ食べられては、いくら死ににくい体質の仙人と言えども命は無い。
 仙人の天敵は妖と言える。

 のに、紅花からは人を食べる事によって生じる穢れの気配を感じ取れない。どちらかと言うと仙人の気配だ。
 

「まあそうだな。それだけ長い間、人間を喰わずにきたという事だろう。それは褒めてやる」

「人間を食べない……。紅花さんは仙妖を目指しているのですか?」

 妖が仙籍に入れられると仙妖と呼ばれるようになる。ただしこれは本当に極稀。
 精気の扱いがどんなに上手くても善行を積むのが苦手どころか人を喰い悪行を行う妖では、仙籍に載せられる事なんてほとんど無い。実際、妖には何度も会っていても仙妖に会ったことは一度もない。
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