仙女の花嫁修行
「そう。足りない陽の気を補う為にこうして遊郭で励んでるってわけよ。仙人は相手してくんないしね」

「あぁ、なるほど」

 どんなに善行を積み人を食べることを戒めている妖でも、妖は妖。誰も相手をしてくれないのだろう。ただの人間と房中術をした所で得られる精気など雀の涙ほどだろうけど、やむを得ないと言ったところか。

「だーかーら! 颯懍があたしの相手をしてくれればこんなみみっちい事しなくったって済むのに。ねえ、今夜どう? なんなら3人でも大歓迎よ」

「阿呆ぬかすな。お主じゃ勃たん」

「んもうっ! 昔っからそう言って相手にしてくれないのよォ。酷くない?」

「あは、あははは……」


 紅花《《じゃ》》、じゃなくて、《《でも》》の間違いでは?


「でも泰然ちゃんはそのつもりでここへ来たんでしょう? 道士でもただの人間よりずっといいわ」

 狐と分かっているのにこの色気はどこから来るのか。すーっと太腿を撫でられて鳥肌がたってしまった。

「あーー、あのですね。今日僕がここへ来たのは、ある悩みを解決したくてですね」

「あら、なに?」

「実は…………ごにょごにょごにょ…………という訳なんですよ」

 紅花に小声で不能である事とその経緯を軽く説明すると、憐れそうな目で私の股間に視線を向けてきた。

「ええっ?! アソコが勃たない?! 貴方、女みたいに可愛い顔立ちしているかと思えば、下が不能とはねぇ」

「そうなんです。だからどうしたらいいものかと、その道の達人にお聞きしたくてですね」

「んじゃあ早速脱いでみてよ。遊郭で長年鍛え上げたあたしのテクニックで元気にしちゃうから」

「あーーっ! いやっ、そのっ、でも師匠の知り合いにして貰うのは流石に恥ずかしので、口頭でお願いします」

 腰の帯を解いてくる手を慌てて掴んで止めた。もう手汗びちょびちょだよ。
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