仙女の花嫁修行
 大丈夫だと思ったのに、何これ。

 さっきの出来事が脳内で勝手に繰り返し再生される。

 死ぬほど恥ずかしい。帰ってどんな顔して会えばいいのか分かんないよ。

 ブチブチと手当り次第に薬草を引っこ抜いていたら、籠の中は既に薬草でこんもりと山になっていた。

「あれ、もうこんなに採取できたの? って言うかここどこ??」

 いつの間にかいつも採取に出掛ける場所よりも、ずっと先まで進んでしまっていたらしい。
 足元を見回すと、これでもかと言うくらい薬草があちこちに生えていた。

「すごい! ここ薬草だらけだ。いい所見つけた。ラッキー!」

 折角だからもっと摘んで帰らないとね。と、山の上に更に薬草をのせていると、喉元にひんやりとする物があてがわれた。
 動いたらまずいものだと一瞬で分かった。鋭利な金属の感触に、冷たい汗が吹き出る。

「何をしている」

「何って……薬草採取ですけど」

「人の畑でか?」

「はっ、畑?!」

 男性の言葉に改めて周りを見ると、薬草は他で見るよりも綺麗に並んで生えているようだった。もう少し先を見ると土が耡われていて、雑草も殆ど生えていない整った地面が広がっていた。

 しまった、考え事して全然気が付かなかった。

「ごめんなさい! 畑だと気付かずに入り込んでしまいました」

 喉元にあてられていた剣が外された代わりに、腕ごと縄で巻かれて縛り上げられた。ご丁寧に、術を封じる術までかけられている。術を封じられたということは私よりも力が上の人だ。
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