仙女の花嫁修行

「あら、良いじゃない。沢山薬草を栽培出来るようになれば、助かる人が沢山って事でしょう?」

 さっ、さすがは天仙になれるだけの仙女様。心持ちが庶民とは違う。
 俊豪も同じように感じたようで可馨の言葉に惚けてしまっている。

「……なんて言ってみたけれど、颯懔なら心配ないわ」

「?」

「颯懔は栽培しないどころか、買ってきた薬草すら使わないんじゃない?」

「そうですね。仙薬を作る時は必ず採集に行きます」

「ええ? 紫蘇や紫蘭も?」

「そうだけど」

「簡単に栽培できるのに。じゃあなに、買わないってことは御種人蔘(オタネニンジン)も頑張って探す訳だ?」

「うん」

「ほら、可馨様。やはり教えては駄目ですよ。御種人蔘は可馨様が栽培方法を編み出したのでしょう?」

「ふふっ、だから、大丈夫と言っているでしょう。颯懔は昔から野生の草を使うのよ。こだわりがあるらしくてね。今もきっと変わらないと思ったわ」

「へえ……そうなんですか」


 可馨は颯懔の事を良く知っているんだな。


 そう思った途端、胸あたりがチクッとした気がした。さっきつっかえた包子がまだのどに残っているのかなぁ。
 お茶をひと口飲んでみたら気のせいだったのか、嫌な感じは消えていた。

「さて、そろそろ皆んなも食べ終えた頃かしら。午後からもまた頑張ってね」

「はい。ご馳走様でした」

 さあ仕事仕事!!
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