仙女の花嫁修行
「仙術を使って見えるようにした。にしても敖順(ゴウジュン)よ、お主はいつもいつも寝過ぎだ。お陰で近く一帯がカラカラになっておるぞ」

「おぉ、すまんすまん。つーい飲み過ぎて、寝すぎてしもうた」

 敖順と呼ばれていた龍神様は、もう一度「ワハハ」と豪快に笑った。あの海鳴りのような轟音は龍神様のいびきだったのかと思うと、ビクビクしていた自分がアホらしくなってくる。

「度々すいません。私お嫁に来たのですが、もしかしてもしかすると、用無しってやつですか?」

 先程の2人の会話からすると、生け贄とか貢ぎ物だとか、そう言う類いの物は関係無さそうだ。期待を込めて話しかけてみると、期待通りの答えが返ってきた。

「ワシは神だそ。(あやかし)じゃあるまいに、人間なんぞ喰わん。颯懍(ソンリェン)よ、はよ送り返してやれ」

「何を偉そうに。お主こそさっさと雨を降らせてこい」

「言われなくともすぐやるさ。どれ、ちょいとひと仕事してくるかね」

 どっこいしょ。と龍神様が短い前脚で身体を起こし、私と颯懍と言う男性の横を猛スピードで飛んで通り抜けていった。ビュウウっと吹いた風に目を瞬かせていると、今度は突然に身体を下からすくい上げられた。

「出るぞ」

「ふええっ?!」

 颯懍は私を肩に乗せて担ぎ上げたまま、涼しい顔をして《《水の上を》》走り出した。

「うえぇ?! 何これ、え? うそおぉぉーーーーっ!!」

「うっさい! 耳がキンキンする!!」

 洞窟内に木霊した私の絶叫音を暗闇に残して、私たちはあっという間に外に出た。
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