仙女の花嫁修行
「俊豪! もしかしてここの整備任されてるの? 可馨様に手伝って来るように言われて来たんだ」

「うわぁ、またあんたと仕事すんのか」

「失礼ね! ブー垂れてないで、早く何をすればいいのか教えて」

「この亭の柱の塗り替え。まず古いのを綺麗に引き剥がしてくれ」

「了解!」

 2人で作業に取り掛かる。
 塗料を引き剥がしてから、何度か塗り重ねなければならない。となると結構な時間がかかるわけで。無駄話なんてしていられないので、黙々と作業を続ける。


 いい加減に手が疲れてきたし、お腹も空いてきた。痛くなった手をブラブラとして休ませていると、俊豪が話し掛けてきた。

「あれから仙術の方はどうだ?」

「うん、いい感じだよ。時々兄さんや師匠に稽古つけてもらってる」

 俊豪と練習試合みたいなのをしたいと思っていたんだけど、それを言うと何故か颯懔の機嫌がすこぶる悪くなるので諦めている。道士同士でやるからいいのに。

「あっ、鐘の音」

「昼を食べに行くか」

 正午を報せる鐘の音が聞こえてきた。食堂に行けば昼食が用意されているらしい。場所が分からないので俊豪の後ろを歩いてついていく。

 池沿いにはさっき塗り替え作業をしていたのとはまた別の亭があったり、回廊があったりと華やかで美しい。樹木もきっと、四季折々の花が楽しめるようにと植えられているのだろう。ちらほらと梅の花が咲いているのが見える。


 途中、宴の会場となる桃園の前を通りかかった。

 門で仕切られているところからして、相当大事に管理されていることが分かる。
< 78 / 126 >

この作品をシェア

pagetop