仙女の花嫁修行
 モヤモヤを抱えたまま食堂までやって来た。
 颯懔の屋敷はもちろん、可馨の屋敷の食堂よりもずっと大きい。

 幾つも卓と椅子が並べられ、使用人と思しき人達がせっせと食事を配っている。食べたい料理を貰ってから、席に着くという様式みたいだ。
 菜の炒め物と(ちまき)を貰って俊豪の前に座った。

 葦の葉をほどくと、中には蒸したての餅米が。塩辛く味付けされた豆と刻まれた野菜が入っていて、ホカホカ・モチモチの食感に何個も食べたくなる。

「ここってお代わり出来るのかな?」

「何個食う気だよ」

 呆れ顔の俊豪をよそに、もう一度粽を貰いに行った。

「私先に戻ってるね。道は覚えたから」

「あ? ああ」

 食後のお茶を啜っている俊豪に後ろから声を掛けて、もう一度あの場所へ。




「紅花さーん」

 紅花はまだ塗料を落としていた。拭き終えた塗料の残りの跡を消すために、石鹸とブラシで擦っている。私に気が付くと、紅花は手を止めて立ち上がった。

「明明ちゃん。もうご飯食べてきたの?」

「はい。しっかり頂いてきたのでご心配なく。それで、これ……」

 ゴソゴソと袖口に手を突っ込んで、出した物を紅花の手に乗せた。まだほんのりと温かい。

「これ……粽?」

「今日のお昼ご飯に出ていたので。紅花さんもちゃんと食べないと元気出ないですよ。それじゃあ私はこれで!」

 ペコッとお辞儀をして、自分の持ち場である亭へと走った。遅くなると俊豪がまたうるさそうだもんね。
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