輝く樹木
第1章 第19話
輝夫は前庭を見つめていた。曇った空には星の輝きは全く見えなかった。輝夫の部屋の窓から漏れてくる光だけが前庭を照らしていた。道路沿いに3本の木の黒い輪郭がぼんやりと見えた。輝夫は左側の木を見つめていた。ピンク色の微かな光が輝いていた。そのピンク色の光は少しずつ輝きを増していった。やがて直視していられないくらいの眩しい光になった。ピンクの光の線が窓から輝夫の部屋の中へ流れ込んできた。部屋の中でピンク色の光が渦巻きとなって回転していた。部屋がやがてその光の動きに合わせて回転し始めた。部屋が浮き上がっていくのが感じられた。ピンク色の光の渦が黒い闇の渦へと変化していった。部屋全体が真っ暗な闇に包まれた。不思議なことに部屋の揺れと闇の中で心地よい感覚が体を包んでいた。