輝く樹木

第1章 第26話

「今日の理科の授業は生物の内容だったけど、輝夫は染色体の内容に興味を示していたね」
「あの子は小さい頃からいろいろなことに興味を持っていたわ」
「まあ、好奇心に満ちているのが子供の特徴なんだろうけど、輝夫は他の子供よりも好奇心旺盛な子だったかな」
「そう感じるのは親バカな証拠かしら」
「親ばかか・・・そうかもしれないな。子供は輝夫だけだから比較するのは他人の子だし。どうしても欲目で見てしまうんだろうな」
「そう、だから実の子供に教えるのに抵抗を感じてしまうのね。でも授業をするとか教えるというのではなく、一緒に勉強するんだというふうに意識を変えたら、気が楽になって続けていけるような感じになったわ」
「君はもともとプロの教師だったからな。そういうふうに意識を変えられたのは素晴らしいことだったと思うよ。その点僕なんか楽だったよ。教師の経験ゼロだったから、最初から授業をしようとか教えようとかという意識は全然なかったから。一緒に勉強をするんだという意識でいたから。いつの間にか勉強していることが楽しくて輝夫のこと忘れてしまうくらいだったからな」
「そういえば輝夫が小さい時一緒にブロック遊びをして、あなたの方が夢中になった時がよくあったよね」
「そうだね。だから今やっている授業も勉強もその延長線なのかもしれないね」
「そう考えるとあなたが教師でなくてよかったわ。両親が教師か元教師だったら大変だったかも知れないわ」
「でも生物学の世界でも科学進歩が目覚ましくて大変だよね。ゲノム編集とかすごい時代になったもんだ。やはりコンピュータの能力が驚異的に進歩したからかね」
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