輝く樹木

第1章 第30話

「今日理科で生物の勉強をしている時に輝夫からiPS細胞のことで質問してきたよ。君に説明していたからよかったよ。君に説明したときよりも分かりやすく説明できた気がするよ」
「それじゃ、あなたに説明を求めてよかったわ」
「自分で説明すると分かりやすくなるんだね」
「それは分かるわ。実際教えることを仕事にしていたからね。1教えるのに10ぐらい覚えなければならないということをよく経験してきたから」
「そうか、教師という仕事はほんとに大変なんだね」
「私なんか早く辞めたからあまり言えないんだけど、生涯ずっと携わっている教師は大変だと思うわ」
「どうだい将来輝夫が独立して、自分たち夫婦二人きりになって、経済的にも精神的にもゆとりが出来た時、また教師をやりたいと思うかい?」
「おそらくやりたいと思わないでしょうね。たとえまた仕事に就くとしてもまったく別の仕事につくでしょうね」
「あっ、そういえば、輝夫の子供の時のスケッチブック。以前見た時気が付かなかったんだけど、こんな絵があったよ」
「えーおかいしいわね。こんな絵あったかしら。でも上手ね、何歳の時描いたのかしら。何の絵かしら。授賞式の絵みたいだわね」
「うんーこれはノーベル賞授賞式の絵だね。子供の絵にしては随分手の込んだ描き方をしているなあ」
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