輝く樹木
第1章 第31話
曇った夜空で月も星も全く見えなかった。輝夫の部屋はスモールライトさえ点けていなかった。前庭は全くの闇に包まれていた。三本の木の輪郭さえ見ることが出来なかった。緑色の微かな光が見えた。その微かな緑の光は左側の幹の中から発せられたもので、輝きが増すにつれて他の二本の木を照らしていた。前庭が緑の光に包まれていた。三本の木の葉が緑の光に呼応して緑色に輝いていた。溢れるほどの眩しい緑の光が窓から流れ込んできた。床、壁、天井が緑色に輝いていた。輝夫の部屋の中にあるものすべてが緑色に輝いていた。体全体が心地よい暖かさと心地よい涼しさに包まれて、今まで感じたことのない快適な空気に包まれているような感じがした。眩しい緑色の光を受けて瞼が心地よい重さを感じた。瞼は心地よい暗闇を受け入れていった。暗い闇の中で体が信じられないほど軽くなり浮いていくのを感じた。暗い闇の中で緑の光の線が時々通り過ぎていった。今まで感じたことのない心地よい快適さの中で意識が少しずつ消えていくのを感じた。