輝く樹木
第1章 第33話
輝夫は真っ暗な暗闇の中に立っていた。レースのカーテンも遮光カーテンも全開の窓ガラス越しには、真っ黒な暗闇が前庭全体を覆っていた。三本の木の方を向いていたはずであるが今その輪郭さえ見ることが出来ない。ただ深く重い闇が横たわっているだけであった。数秒前に緑の光を見たことは覚えている。数秒前であったのに長い時間違う場所にいたという何とも不思議な感覚だけが残っている。心地よい重さに体が押しつぶされそうな気がした。瞼が心地よい重さに耐えられなくなり心地よい闇を受け入れていった。体がベッドに吸い寄せられていった。輝夫は深い眠りへと誘われていった。