輝く樹木

第1章 第35話

 その日は雲一つ見えないほどの晴天で、一面真っ青な空の中で純白の眩しい太陽が終始輝いていた。風もほとんどなかった。その日の夜は晴れ渡った空をそのまま引き継いだ。満月の形に向かって少しずつ形を大きくしていた上弦の月の光と、空一面夥しく輝いている星々の光が前庭一面を照らしていた。三本の木は月の光と星々の光を浴びて幹と枝から焦げ茶色の光がきらめいていた。時々微かに吹いてくるそよ風に揺られて、葉が滲んだ濃い緑色の光を微かに反射させていた。輝夫は右側の木をじっと見つめていた。右側の木の幹に青く輝く一点の光が現れた。その青い光の点は少しずつ大きくなりその輝きを増して行った。大きな円になった青い光はその輝きを増して行った。木の幹も枝も葉も青く染まっていった。他の二本の木も青く染まっていった。庭全体が青く染まって眩しい青い光が窓から流れ込んできた。部屋の床、壁、天井が青く染まっていった。部屋にあるものすべてが青く染まっていった。輝夫は言い知れぬほど心地よい暖かさに包まれていた。青い光を浴びて瞼が重くなっていった。心地よい重さであった。心地よい暗闇によって青い光が突然遮断された。心地よい暗闇に体全体を覆われた。体が信じられないほどの軽さを感じた。少しずつ体が浮いていくのを感じた。心地よい暗闇の中を眩しい青い光の線が時々横切って行った。
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