輝く樹木

第1章 第39話

 雲ひとつない夜空に十日夜の月の光と星々の光が前庭を照らしていた。月の光と星の光を浴びて三本の木が幹と枝から茶色の光を反射させていた。緑の葉は微風に揺れ微かな音を立てていた。その微かな音に合わせて緑色の光を反射させていた。輝夫は中央の木の幹の辺りをじっと見つめていた。紫色の点の光が微かに輝いていた。その輝く紫色の点は少しずつ大きくなっていった。そしてその輝きを増していった。その点が大きな円になった時、その紫の輝きはあまりにも眩しいので直視出来ないほどであった。木の幹も枝も葉も紫に染まっていった。他の二本の木も紫色に染まっていった。前庭全体が紫に染まっていった。窓から眩しい紫の光が流れ込んできた。床も壁も天井も紫色に染まっていった。部屋にあるものすべてが紫色に染まっていった。紫色の眩しい光は輝夫の瞼に心地よい重さを与えた。体が心地よい暖かさに包まれていくのを感じた。心地よい暗闇に覆われていくのを感じた。体が信じられないくらい軽くなっていくのを感じた。体が少しずつ浮き上がっていくのを感じた。心地よい暗闇の中を眩しい紫色の線が時々通り過ぎていった。
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