輝く樹木
第1章 第43話
月が厚い雲に覆われて全く姿を消していた。月のある場所から少し離れたところにはほとんど雲らしい雲はなくて、夥しい数の星が輝いていた。輝夫が部屋の電気を消すと、星の光が降り注いできた。星の光は部屋の窓から溢れるように流れ込んできた。純白の眩しい星の光は部屋中に溢れていた。輝夫は窓を開けて身を乗り出して夜空を見ようとした。左側の木の幹に水色の点が現れて輝き始めたのを輝夫はすぐに気がついた。水色の点は少しずつ大きくなってその輝きを増していった。左側の木の幹も葉も水色に染まっていった。他の二本の木も全体が水色に染まっていった。前庭全体が水色に染まっていった。水色の光が部屋の中へ流れ込んできた。水色の光は部屋中に溢れる純白の星の光を水色に染めていった。床、壁、天井が水色に染まっていった。眩しい水色の光は輝夫の瞼を重くしていった。心地よい暗闇に覆われていった。心地よい暖かさに包まれていくのを感じた。体が信じられないくらい軽くなっていくのを感じた。心地よい暗闇の中で体が少しずつ浮いていくのを感じた。心地よい暗闇の中を時々眩しい水色の線が横切って行った。