輝く樹木

第1章 第49話

 輝夫は暗闇の中に立っていた。そら全体が厚い雲に覆われていて月の光も星の光もなく、部屋の電気も点けていなかった。数秒前に右側の木の幹の辺りに純白の点が光っているのが見えた。数秒前のことなのに随分時間が経っている感覚が残っている。部屋の電気を点けてレースのカーテンと遮光カーテンを最後まで閉めた。ベッド脇のスタンドのスモールライトを点けて部屋の電気を消した。
 輝夫はベッドに横になって天井をじっと見つめていた。薄暗い部屋の中でスモールライトの放つ微かな光を浴びた天井は微かな純白の光を反射させていた。薄暗い中で微かな純白の光を反射させている天井に朧気《おぼろげ》な映像が現れた。人がスピーチをしている映像のように見えた。その映像は少しずつ姿を消していった。スモールライトから発せられた純白の光は、薄暗い部屋の中を純白の粒となって飛び交っていった。その純白の光の粒は互いにぶつかり合って様々な色に変化していった。輝夫が見つめている天井に様々な色の光の粒が織りなす幻想的な模様が現れた。その幻想的な模様によって瞼に心地よい重さを感じた。そして輝夫は心地よい深い眠りへと誘われていった。
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