輝く樹木
第2章 第3話
「悠人、今日は食器洗いの当番だね。美沙は洗濯物の当番なのを忘れないでよ。郁次郎は麻美のことよく見ててよ。母さんこれから夜のパートに行くからね。寝るのは10時っていうこと忘れないでよ。火の元の確認と戸締まり忘れないでよ。悠人、分かった?」
二人の息子と二人の娘の母親である清水裕子は、まだ夕食を食べている子どもたちに向かって、働きに行く用意をしながら言った。裕子の夫である忠雄が亡くなったのは2年前のことであった。忠雄は専門学校を卒業してから、中堅会社の事務職に正社員として採用された。すでにその会社の事務職として勤めていた裕子と知り合った。裕子は結婚と同時にその会社を辞めた。その後、忠雄が10年間勤めた後その会社にもOA化の波が押し寄せた。今まで手作業でしてきた事務処理の可成りの部分がコンピュータで処理できるようになった。そのためOA化の費用に見合う事務部門の人員削減が行われた。忠雄は当然のことのようにその候補に挙がった。異動させられたのは営業部であった。忠雄の性格上営業部は合わない部門であった。一月後に自主退社することとなった。1年後に正社員になれるという契約で中堅の建設会社に採用された。11ヶ月経ったときのことである。忠雄は建設現場で事故に遭い亡くなってしまった。正社員ではなかったということで労災に認定してもらえなかった。小5の息子悠人、小3の娘美沙、5歳の息子郁次郎、3歳の娘麻美と4人の子供を残して亡くなってしまったのであった。
弟妹たちが皆眠って、悠人が自分の机に向かうことが出来たのは11時過ぎであった。寝静まった夜の静けさの中で郁次郎の寝息が聞こえた。悠人は郁次郎と部屋を共有していた。鞄から封筒を取り出し、封をしていない封筒から文書を取り出した。保護者への通知文書であった。オリエンテーションの時担任の教師から、説明を聞いてからその封筒が配られたので内容は分かっていた。中学1年の1年間でかかる教材費の内訳と納入に関する通知であった。
今日夕食前に悠人がその封筒を渡そうと台所に行った時、裕子は台所にあるテーブルの上でお金を振り分けているところであった。財布から千円札数枚ずつ取り出して2つの封筒に入れているところであった。小5の美沙と小2の郁次郎の給食費であった。財布には数枚の千円札しか残っていないのが分かった。裕子の沈鬱そうな顔から現在の状況が分かった。悠人はその封筒を裕子に渡すことが出来なかった。
悠人は通知文書を見ながら小学5年、6年の時、裕子から給食費を渡された時の裕子の沈鬱な顔を思い出した。
二人の息子と二人の娘の母親である清水裕子は、まだ夕食を食べている子どもたちに向かって、働きに行く用意をしながら言った。裕子の夫である忠雄が亡くなったのは2年前のことであった。忠雄は専門学校を卒業してから、中堅会社の事務職に正社員として採用された。すでにその会社の事務職として勤めていた裕子と知り合った。裕子は結婚と同時にその会社を辞めた。その後、忠雄が10年間勤めた後その会社にもOA化の波が押し寄せた。今まで手作業でしてきた事務処理の可成りの部分がコンピュータで処理できるようになった。そのためOA化の費用に見合う事務部門の人員削減が行われた。忠雄は当然のことのようにその候補に挙がった。異動させられたのは営業部であった。忠雄の性格上営業部は合わない部門であった。一月後に自主退社することとなった。1年後に正社員になれるという契約で中堅の建設会社に採用された。11ヶ月経ったときのことである。忠雄は建設現場で事故に遭い亡くなってしまった。正社員ではなかったということで労災に認定してもらえなかった。小5の息子悠人、小3の娘美沙、5歳の息子郁次郎、3歳の娘麻美と4人の子供を残して亡くなってしまったのであった。
弟妹たちが皆眠って、悠人が自分の机に向かうことが出来たのは11時過ぎであった。寝静まった夜の静けさの中で郁次郎の寝息が聞こえた。悠人は郁次郎と部屋を共有していた。鞄から封筒を取り出し、封をしていない封筒から文書を取り出した。保護者への通知文書であった。オリエンテーションの時担任の教師から、説明を聞いてからその封筒が配られたので内容は分かっていた。中学1年の1年間でかかる教材費の内訳と納入に関する通知であった。
今日夕食前に悠人がその封筒を渡そうと台所に行った時、裕子は台所にあるテーブルの上でお金を振り分けているところであった。財布から千円札数枚ずつ取り出して2つの封筒に入れているところであった。小5の美沙と小2の郁次郎の給食費であった。財布には数枚の千円札しか残っていないのが分かった。裕子の沈鬱そうな顔から現在の状況が分かった。悠人はその封筒を裕子に渡すことが出来なかった。
悠人は通知文書を見ながら小学5年、6年の時、裕子から給食費を渡された時の裕子の沈鬱な顔を思い出した。