輝く樹木

第3章 第2話

 雲がほとんどない夜空に月と星々が輝いていた。前庭は月と星の光を浴びて様々な色の光を反射させていた。道路沿いに立っている三本の木はその葉が濃い緑色の光を反射させ、幹が焦げ茶色の光を反射させていた。輝夫は部屋の電気をすべて消した。部屋は暗闇に包まれた。遮光カーテンとレースのカーテンを全開すると窓ガラスを通して月と星の純白の光が部屋のなかに流れ込んできた。壁と天井が月と星の光を浴びて純白の光を反射させていた。純白の光は純白の光の粒となり部屋中を飛び交っていた。純白の光の粒と粒は互いに衝突して様々な色へと変化していった。様々な色の光の粒が織りなした模様が天井と床の間に浮かんでいた。
 輝夫はガラス窓を全開した。前庭から微風が全開した窓を通して入ってきた。微風とともに部屋に流れ込んできた月の光と星の光は、部屋中を飛び交っている様々な色の光の粒を吸収していった。天井と床の中央に浮かんでいた様々な光の粒が織りなす模様も、月の光と星の光に吸収されていった。天井と壁と床と部屋にあるすべてのものがもとの自然な色を放っていた。
 ガラス窓を全開した窓越しに輝夫は、道路沿いに立っている三本の木をじっと見つめていた。微風に吹かれて三本の木の葉は微かに揺れていた。葉と葉が擦れて微かに響く音が微風にのって輝夫の耳元に運ばれてきた。自然が奏でる音が音楽のように輝夫の耳元で響いていた。
 中央の木の幹に青い光の点が現れた。しばらくすると左側の木の幹に赤い光の点が現れた。またしばらくすると右側の木の幹に緑色の光の点が現れた。3つの光の点はあるリズムに合わせながら交互に点滅していた。3つの光の点は少しずつ大きくなりながらその輝きを増していった。3つの光の点はそれぞれの幹を覆う円になった。やがて3本の木を覆う大きさの円になり、3つの円は重なって一つの円になった。その円からは純白の光が放たれ前庭全体を照らしていた。
 純白の眩しい光がガラス窓全開の窓を通して部屋の中に流れ込んできた。天井、壁、床、部屋にあるものすべてが純白に染まっていた。部屋中溢れる純白の光で瞼に心地よい重さを感じた。心地よい暗闇に覆われた。体が心地よい暖かさに包まれた。体が信じられないくらい軽くなっていくのを感じた。心地よい暗闇の中を体が浮いていくのを感じた。心地よい暗闇の中を純白の光の線が時々横切って行った。
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