輝く樹木

第3章 第4話

 ガラス窓を全開した窓の前に輝夫は立っていた。数秒前に三本の木を覆うように純白の光る円が輝いていたのをはっきりと覚えていた。どこか遠いところに長い時間いたという感覚が体中に感じられた。その感覚には何か言葉では言い表せないような達成感があった。その達成感には輝夫がいつも絵を満足に描きあげることができた後に感じられるような充足感があった。
 雲がほとんどない夜空に月と星々が光り輝いていた。道路沿いに立つ三本の木と前庭は夜空から降り注ぐ純白の光を浴びていた。三本の木の葉と幹は純白の光を浴びて濃い緑の光と焦げ茶色の光を放っていた。
 ガラス窓を全開した窓から月と星の純白の光が流れ込んできた。電気をすべて消していた部屋の中は月と星の純白の光で溢れていた。天井と壁と床と部屋にあるすべてのものが純白に染まっていた。天井と壁と床と部屋にあるすべてのものは純白の光を反射させていた。純白の光は純白の光の粒になり互いにぶつかり合っていた。
 輝夫はガラス窓を最後まで閉めて、ベッドに横になった。夜空から降り注ぐ純白の光は窓のガラス面を通って7つの色に分裂していった。7つの色は7つの色の光の粒となって部屋中を飛び交い、部屋中を飛び交っていた純白の光の粒を吸収していった。7つの色の光の粒は夥しい数の色の光の粒となって部屋中を飛び交った。天井には部屋中を飛び交う夥しい数の色の光の粒によって織りなされた幻想的な模様が映し出された。天井に映し出された幻想的な模様のなかに一瞬ゴッホの『麦畑』が映し出された。天井に映し出された幻想的な模様で瞼に心地よい重さを感じた。輝夫は心地よい深い眠りへと誘われていった。
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