輝く樹木
第3章 第6話
「しかし、こうやって輝夫のスケッチブックに描かれた絵を見ていると、どう考えても今初めて見たような絵が多い気がするんだ。でも今こうして、ここにこの絵が存在しているのだから見ているんだよな」
「輝夫は小さい時から絵を描くことが好きで確かに絵が上手に描けたわ。でもこんなに上手だったとは思わなかったわ。それにどうして、今初めて見るような感じがするのかしら?」
「今僕たちは現在この時間にここに存在している。でも僕たちの過去には、2つの同時に進行していた2つの世界があって、昨夜のある時点まではいま僕たちがいる現在と繋がっていない方の世界と繋がっていた。でも昨夜のある時点からその世界から切り離されて、今僕たちがいる現在と繋がっている世界と繋がっていた」
「この2週間も昨晩のある時点までは、今この現在と繋がっていない世界にいたというの?」
「どういうことか分からないんだけれど、そういう感覚が体に残っているような気がするんだ。別の世界で経験したことを体のどこかで覚えているというか。でもそれは現在自分が存在している世界とは繋がっていないから記憶にない。でも現在と繋がっている世界での出来事は、自分の五感も体もその時に関係したものを見ても、初めて見るように感じてしまう。うまく言えないんだけど」
「輝夫はいじめも不登校も経験してないでしょう。でもそういうときに親が経験するような苦しい体験が記憶にはないけど、体がその苦しみを覚えている。不思議な感覚が残っているの」
「それに輝夫が写生会で描いた素晴らしい絵。そしてその絵が全国のコンクールで受賞したこと。この絵と賞状をみると、確かにそのときのことがなかなか思い出せなかったけど、こうやってずうっと見ていると、少しずつ思い出してくる。でもそのとき経験しているはずの喜びや嬉しさの経験が、まったく体に残っていないという不思議な感覚があるんだ」
「輝夫は小さい時から絵を描くことが好きで確かに絵が上手に描けたわ。でもこんなに上手だったとは思わなかったわ。それにどうして、今初めて見るような感じがするのかしら?」
「今僕たちは現在この時間にここに存在している。でも僕たちの過去には、2つの同時に進行していた2つの世界があって、昨夜のある時点まではいま僕たちがいる現在と繋がっていない方の世界と繋がっていた。でも昨夜のある時点からその世界から切り離されて、今僕たちがいる現在と繋がっている世界と繋がっていた」
「この2週間も昨晩のある時点までは、今この現在と繋がっていない世界にいたというの?」
「どういうことか分からないんだけれど、そういう感覚が体に残っているような気がするんだ。別の世界で経験したことを体のどこかで覚えているというか。でもそれは現在自分が存在している世界とは繋がっていないから記憶にない。でも現在と繋がっている世界での出来事は、自分の五感も体もその時に関係したものを見ても、初めて見るように感じてしまう。うまく言えないんだけど」
「輝夫はいじめも不登校も経験してないでしょう。でもそういうときに親が経験するような苦しい体験が記憶にはないけど、体がその苦しみを覚えている。不思議な感覚が残っているの」
「それに輝夫が写生会で描いた素晴らしい絵。そしてその絵が全国のコンクールで受賞したこと。この絵と賞状をみると、確かにそのときのことがなかなか思い出せなかったけど、こうやってずうっと見ていると、少しずつ思い出してくる。でもそのとき経験しているはずの喜びや嬉しさの経験が、まったく体に残っていないという不思議な感覚があるんだ」