輝く樹木

第3章 第8話

「荷物の最終チェックをしなければならないね」
「二週間の滞在だったからこんなものなのね。家の中は全部見たつもりよ。忘れ物はないと思うわ。あとは輝夫のいた部屋だけだわ。でもここに生涯住んでいくような感じで、車にぎゅうぎゅう詰め込んで引っ越し業者に、家具類家電類などを運んでもらったような感覚が体中に残っているのは何なのかしら?」
「そう引っ越しをしたときのような、あの慌ただし感覚が体中に残っている。不思議な感じがするよな。しかし、この家の設備はすごい設備だね。屋根全体に太陽光パネルが張り巡らされていて、大容量の蓄電池に充電しているから、夜でも天気の悪い日でも太陽光で発電した電気を使えるんだからね。水も地下水を汲み上げて高性能の浄水器を通っているから安心して使えるんだ。浄化槽も最新型のものであまりメンテナンスの必要のないものみたいなんだ。お金があったら将来こんな家で暮らしたいね」 
「2010年代になってから災害が多いでしょう。オール家電って便利ですけど地域全体が停電になったら大変だわ。もっと大変なのは水道がストップしたときだわ。でもこの家だったら災害のとき安心だわ」
「ライフラインには電気とガス・水道があるけど、この家はオール電化だからガスも石油もいらないよね。もう一つのライフラインの通信なんだけど、インターネットが衛生通信で繋がっているんだ。だから食料だけ備蓄しておけば災害時に強い家だよ。缶詰やカップヌードルなどをたくさん備蓄しておけば安心だよ」
「最初この家のカタログを見てその値段に驚いたけど、災害時に強いライフラインが充実しているのをみると仕方ないと思うわ」
「このモニターはそのメリットを広く知ってもらうために、まず実際に暮らしてもらってその利便性を体験してもらうことが、その意図することなんだろうけど」
「耐震性はどうなのかしら?」
「震度7の地震に10回以上耐えられるみたいだ。同じモデルの家で何度も耐震テストをしたみたいだよ」
「あなたが定年退職をするころ、もっとずっと値段がやすくなったらいいわね」
「それからとても感心したことがあるんだけど。ここの庭は僕たちが住んでいるところから考えたら信じられないくらい広いよね。こんな広い庭の管理は大変だろうな。除草はどうするんだろうと思ったんだ。この二週間この家に住んでいて雑草のことはあまり気にならなかったよね。このこともホームページやカタログに書いてあったんだけど、グランドカバーを植えているみだね。グランドカバーというのは雑草を目立たなくするために植える見栄えのよい植物を植えることらしいんだけど。ヒメイワダレソウという植物があって普通の雑草よりも生育が早いから、庭中を雑草が覆うのを防いでくれるみたいだよ」
「わたしも広い庭なのに雑草があまり気にならないと思ったわ。それどころかきれいな庭だと思ったわ」
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