あいつは悪魔王子!~悪魔王子を召喚しちゃった!?魔術クラブ結成!都市伝説『追いかけ鬼』をやっつけろ!~
ハンモックがひっくり返って、二人で床に落ちた。
瞬間に、ふわっとトランポリンのような感覚があった。
頭から落ちそうになったのに、痛みも何も感じない。
黒い雲のようなものが散っていくのが見えた。
「麻那人……魔法使ったでしょ」
「うん、だって危なかったし」
「今日はもう三回目使っちゃったよ!? 大丈夫!?」
「大丈夫さ」
時刻は21時。
「悪い偶然も、そんなに毎度起こるもんじゃないよ」
「そうなの?」
「そうだよ」
ラーの事があってから、ちょっとビクビクしていた光。
「だから安心していいよ」
根拠があるのかわからないけれど、麻那人の変に自信たっぷりな微笑みに光の心はホッとした。
「……うん……!」
「ほら、天使の加護も君を見守っている」
キルティングのベッドカバーも、天使の加護マークをデザインしたものだったのだ。
「え?」
おじいちゃんから何度か聞いたこともあったし、本や絵でも見せてもらった事があった紋章だった。
「それなのに気づかなかった……」
「日常にあるものって、そういうことが多いよね」
沢山の色の布で作られていたので気付かなかった。
おばあちゃんが作ったんだろうか? と光は思う。
きっと長い歴史があるのに、くすむこともなくふんわりと、そこにある。
嬉しさで心がくすぐったくなる。
光はフフッと笑った。
「……麻那人もこれを使ってたの?」
「まさか、僕が使ったら溶けちゃうよ」
冗談なのか、なんなのか。麻那人がベロっと笑って舌を出した。