さよならシンデレラ


──意味が、分からない。
本当に本当に、意味が分からなくて、私は真耶の背中を見送るしかできなく。

置きっぱなしにされた真耶のスマホと、〝桜木真耶〟と書かれた名前を見ながら──「意味分かんない…」と怪訝な声で呟いた。


「瞳、大丈夫? なんの用事だったの?」


菜乃花が不安そうに聞いてくるけど、本当に意味が分からない私は「…さあ…?」と首を傾げることしかできなかった。

菜乃花に相談したかったけど、授業が始まりそれもできなくて。名前とスマホを見下ろしながら色々考えてみるけど、どうしても真耶の意味が分からなかった。


何故真耶が私に関わってきたのか、それらしい事が分かったのは、次の休み時間の菜乃花の言葉だった。



「それ多分、瀬戸流風が関わってるからだよ」と。


瀬戸流風が関わっているから?
瀬戸流風が関わっているからって、なんであんなにも真耶が絡んでくるの?
ってかそもそも、私瀬戸流風と関わりなんかなくて。


「どういう意味?」

「ほら、この前スマホ拾ったでしょ?」

「うん」

「もしかしたら真耶は、瞳が瀬戸流風に気があるから拾ったって思ってるのかもしれない」


私が? 瀬戸流風に?気がある?


「え…そんなの全くないんだけど」

「うん、でも、ほんと真耶と瀬戸流風って仲が悪いからさ。もし瞳が瀬戸流風に気があるなら、それを邪魔させようっと作戦なのかも」

「作戦?」

「うん、瀬戸流風って一人なの。友達いないっぽいんだよね」


瀬戸流風には友達がいない?


「え、でも、ミオくんは?」

「仲良いってか、…うーん、なんていうんだろ?連れみたいなもんなんだけど、連んでるだけで友達ってわけじゃなさそうなんだよね。瀬戸流風の方が嫌ってるっていうか。言い方難しいな…」

「……それで、瀬戸流風が一人だからって、どうして私に絡んでくる必要があるの…?」

「真耶、瀬戸流風に親しい人を作らせるつもりないんだよ」

「え?」

「瀬戸流風に対する嫌がらせだよ、多分」


嫌がらせ?


「お前はずっと一人でいろ、的な。だから真耶、瞳を自分のものにするまで付きまとってくるよ」

「…なにそれ」

「そういうやつなの、真耶って。ほんとに性格悪いから…。あんまり深く関わっちゃだめだよ?」



確かに、瀬戸流風のこと好き?とか、そういうことは何回か聞かれた。気があるとか。
だとしたら真耶は、私が瀬戸流風に気があるって思っているってことで。

瀬戸流風と私が仲良くならないように、こうして絡んでくると?


瀬戸流風のことが嫌いだから、瀬戸流風に親しい人を作らないように……。



え…、なにそれ。

真耶のやつ、性格悪すぎない?
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