政界のプリンスは年上彼女の溺愛を閣議決定しました!
本編

第1話『桜を見る会』part1

 新宿の庭園に桜が咲き誇り、はらはらと舞い散る花びらが女性の肩をくすぐる。
 彼女の黒髪ロングが春風でふわりと広がる。
 胸につける、この宴で配られた名札には、大学生、桜香子とあった。

 香子は桜の花びらを手ですくい、微笑む。彼女は草木を愛する聡明で純真可憐な女の子だ。

「ふふっ、綺麗」
「綺麗ですよね、桜」
「え」

 話しかけてきたのは、透明感あるテノールの少年の声。
 その彼に桜香子は心奪われた。
 紫の目に藍色の髪、濃紺のスーツに青いネクタイ。160センチの桜香子に比べ、身長は170センチほどか。
 胸元の名札には高校生、秋津悠斗とある。

 そこまで見たところで、ひとりごとを聞かれていたのが恥ずかしくなる香子。
 そして、いきなり話しかけてきた年下の少年を少し警戒する。
 下心あってのことか? 
 あながちそれは間違いではなかった。

「失礼しました、私はこれで」
「あっ」

 少年の恋は打ち砕かれた……かのように思えた。
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