政界のプリンスは年上彼女の溺愛を閣議決定しました!

第1話『桜を見る会』part2

物部泰三内閣総理大臣は、今年も一合升を手に、桜を見る会の開会を宣言した。

『桜を見る会の成功を祈り、乾杯!』

 物部総理大臣と芸能人らとが楽しそうに記念撮影し、彼らの持ちネタを披露していく。  

 女性記者がテレビカメラの前でマイクを握る。

『東邦新聞の磯月望子です。現在私たちは桜を見る会の会場に潜入しています。ご覧ください、参加者にご馳走が振る舞われています。とある参加者からは、与党党員になるならば桜を見る会に招待するとの勧誘があったとの証言を得ました。今回私たちは、税金で有権者の買収、飲食接待があったことを疑い、政府に質問状を送付しましたが、回答を拒否されました』

 続いて、マスコミのカメラが参加者を無許可で撮影していく。

「総理、マスコミのカメラが近づいてきています」

 内閣府参事官の桜俊一はそれに気づき、参加者と握手する物部に耳打ちで注意を促した。
 彼こそが、桜香子の父にして、桜を見る会の帳簿を握る官僚だ。

「財務省の桜参事官ですよね? 今は内閣府に出向していると聞きましたが。桜を見る会は税金の無駄遣いではないのですか?」
「コメントを差し控えさせていただきます」

 桜俊一も政治家の圧力には逆らえない一公務員である。
 マスコミの矛先は無関係に等しい参加者らにも向き始める。

「参加者の方ですね? 桜を見る会は何かの有権者買収ではないのですか!?」

 そうして、取材対象から言質を取り、悪意ある切り取りにより、ニュース映像を編集して、悪事を喧伝する。マスコミの常套手段だ。

 父親がマスコミに責められている様子に、娘の桜香子はいてもたってもいられなくなる。

「香子さんでしたっけ? 今は行かないほうがいいです」

 そんな彼女の手首を、誰かが優しく、だが強く掴み、制する。

「……またあなた? しつこいですよ」

 秋津悠斗だった。

「あなたに恨まれようがお好きにどうぞ。でもテレビに映されて悪人扱いされたいですか?」

 ズルい。
 桜香子は少し考え込む。

「……そうだね、私が間違ってたかも」

 秋津悠斗は手を離す。
 そうして男の子らしい表情でニッと笑った。

「秋津悠斗と申します。俺に任せてくれませんか。いい打開策があります」

 悠斗はスマホでどこかに電話をかけ始めた……


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