政界のプリンスは年上彼女の溺愛を閣議決定しました!
第一章・邂逅
第1話『桜を見る会』part1(改稿中)
紅白幕が風で揺らぎ、数えきれない桜が新宿の庭園に咲き誇る。濃紺の高級ブランドスーツを桜の花びらがくすぐる。
「桜を見る会の成功を祈り、乾杯!」
物部泰三内閣総理大臣は、今年も一合ますを手に、肉厚な笑顔で開会の音頭をとった。
「乾杯!」
その人ごみの中にあって、ひときわ目立つ美少年がいた。容姿にすぐれる彼は藍色の髪に紫の瞳を持っていた。はらはらと舞う桜が芝生に立つ彼の容姿を引き立てる。
その美少年の名前は、秋津悠斗。
紫の瞳は色眼鏡のように政権の功罪にフィルターをかける。
少年ゆえの幼い権威主義で与党の保守党は偉くて強いんだと思い込み、政府、与党主催の幾多ものイベントに足を運んでいた。政権の功罪も知らず、日米安保の強化、雇用の拡大など政権側の政治宣伝を鵜呑みにしている。
政治家気取りの小僧、と担任教師は煩わしく思う。担任も彼の政治活動を制しきれない。なぜならば彼は、日本教職員組合千葉県支部長の母と保守党衆議院議員の継父を持つサラブレッドだからだ。
悠斗は同じ学校の上級生、洋介と美咲を連れ立ち、物部総理大臣との握手の順番を待ちかねていた。彼と彼女も、海上自衛隊東城幸一一等海佐の息子と保守党西村篤志衆議院議員の娘であり、いずれも政府関係者の子女であった。とくに美咲はアイドルでもあるから芸能人枠ともいえる。
アイドルの美咲はジュースを口に含み、ため息をついた。
「税金の無駄遣いね」
「そう言うな。親父さんの立場もあるぞ」
美咲をたしなめる洋介は自衛官の息子としてよく己を律しており、自身も防衛大学校志望だ。
「だってさあ、プロデューサーが税金でお仕事受けて、私たちはタダ働き同然で、政府広報の出演とか㏚イベントに動員されてるんだよ。おまけにセクハラパワハラもあるし、これじゃあ国営枕営業じゃん」
美咲の言葉は事実だ。
いまだ高校生でしかない彼女の青春がむさくるしい男たちの欲によって性的搾取されているのはひとえに、首相官邸と大手芸能事務所の癒着が大きい。
物部首相はコンテンツ産業を利権化するため、官民合同のクールジャパン機構を立ち上げた。
クールジャパン機構には、政府広報、もっといえば政権プロパガンダを委嘱。
美咲のせりふにあった春本Pとは、そんな政権と利害の一致した、アイドルを徹底的に性的シンボルとして利用し過密スケジュールを強いているプロデューサ―、春本健一のことだ。
政府の芸能汚職はいわゆる『公金チューチュー』を許す愚策ではないか?
そうこうしているうちに物部総理との握手の順番が回ってきた。
洋介と美咲と軽く握手したのち、悠斗のところで総理が立ち止まり、その事実に悠斗が頬を紅潮させる。
「君、政治家志望だったっけ? オヤジさんから噂はかねがね聞いているよ」
「物部総理、いつも憧れていました、光栄です!!」
「お、おお、どのあたりを評価してもらえたのかな?」
「日米安保の強化や雇用を増やしたことですよ」
「悠斗、その辺にしておけ」
「あっ、オヤジ」
総理は次の列へ握手とあいさつに回っていった……
「腹減ったなあ、何かつまんでいくか」
秋津文彦国土交通副大臣は腹をさする。
「オヤジ」
悠斗は手をさすりながら愁いを帯びた顔つきになる。
「どうした、改まって」
「俺、物部総理大臣みたいな政治家になりたいです。どうやったらなれるんですか」
「反物部派の意見にも耳を傾けることが大事だぞ。物部さんのようになりたければな」
秋津悠斗は栄華をきわめる物部総理大臣を見て、自分もいつかは政治家になりたいと思う。あわよくば総理大臣になれるものだと少年ゆえの甘い考えで有頂天になっていた。
「桜を見る会の成功を祈り、乾杯!」
物部泰三内閣総理大臣は、今年も一合ますを手に、肉厚な笑顔で開会の音頭をとった。
「乾杯!」
その人ごみの中にあって、ひときわ目立つ美少年がいた。容姿にすぐれる彼は藍色の髪に紫の瞳を持っていた。はらはらと舞う桜が芝生に立つ彼の容姿を引き立てる。
その美少年の名前は、秋津悠斗。
紫の瞳は色眼鏡のように政権の功罪にフィルターをかける。
少年ゆえの幼い権威主義で与党の保守党は偉くて強いんだと思い込み、政府、与党主催の幾多ものイベントに足を運んでいた。政権の功罪も知らず、日米安保の強化、雇用の拡大など政権側の政治宣伝を鵜呑みにしている。
政治家気取りの小僧、と担任教師は煩わしく思う。担任も彼の政治活動を制しきれない。なぜならば彼は、日本教職員組合千葉県支部長の母と保守党衆議院議員の継父を持つサラブレッドだからだ。
悠斗は同じ学校の上級生、洋介と美咲を連れ立ち、物部総理大臣との握手の順番を待ちかねていた。彼と彼女も、海上自衛隊東城幸一一等海佐の息子と保守党西村篤志衆議院議員の娘であり、いずれも政府関係者の子女であった。とくに美咲はアイドルでもあるから芸能人枠ともいえる。
アイドルの美咲はジュースを口に含み、ため息をついた。
「税金の無駄遣いね」
「そう言うな。親父さんの立場もあるぞ」
美咲をたしなめる洋介は自衛官の息子としてよく己を律しており、自身も防衛大学校志望だ。
「だってさあ、プロデューサーが税金でお仕事受けて、私たちはタダ働き同然で、政府広報の出演とか㏚イベントに動員されてるんだよ。おまけにセクハラパワハラもあるし、これじゃあ国営枕営業じゃん」
美咲の言葉は事実だ。
いまだ高校生でしかない彼女の青春がむさくるしい男たちの欲によって性的搾取されているのはひとえに、首相官邸と大手芸能事務所の癒着が大きい。
物部首相はコンテンツ産業を利権化するため、官民合同のクールジャパン機構を立ち上げた。
クールジャパン機構には、政府広報、もっといえば政権プロパガンダを委嘱。
美咲のせりふにあった春本Pとは、そんな政権と利害の一致した、アイドルを徹底的に性的シンボルとして利用し過密スケジュールを強いているプロデューサ―、春本健一のことだ。
政府の芸能汚職はいわゆる『公金チューチュー』を許す愚策ではないか?
そうこうしているうちに物部総理との握手の順番が回ってきた。
洋介と美咲と軽く握手したのち、悠斗のところで総理が立ち止まり、その事実に悠斗が頬を紅潮させる。
「君、政治家志望だったっけ? オヤジさんから噂はかねがね聞いているよ」
「物部総理、いつも憧れていました、光栄です!!」
「お、おお、どのあたりを評価してもらえたのかな?」
「日米安保の強化や雇用を増やしたことですよ」
「悠斗、その辺にしておけ」
「あっ、オヤジ」
総理は次の列へ握手とあいさつに回っていった……
「腹減ったなあ、何かつまんでいくか」
秋津文彦国土交通副大臣は腹をさする。
「オヤジ」
悠斗は手をさすりながら愁いを帯びた顔つきになる。
「どうした、改まって」
「俺、物部総理大臣みたいな政治家になりたいです。どうやったらなれるんですか」
「反物部派の意見にも耳を傾けることが大事だぞ。物部さんのようになりたければな」
秋津悠斗は栄華をきわめる物部総理大臣を見て、自分もいつかは政治家になりたいと思う。あわよくば総理大臣になれるものだと少年ゆえの甘い考えで有頂天になっていた。