ふたご
ねぇねぇねぇ
ねぇねぇねぇ
知っていますか? ねぇ知っている??
怖い怖い双子のお話。
僕と彼女の,私と彼の
素敵なお話。
とってもとっても素敵なお話。
さぁさあ今から始まるよ。
ようやくようやく始まるよ。
行ってらっしゃい見てらっしゃい。
……『『どうぞ……いらっしゃいませ♡』』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
小学生最後の夏休み。
私,小川 梨乃は児童館へとやって来ていた。
家にいても「宿題は?」と言われるばかり。
祖父母の家に逃げてみても,祖父は草抜き,祖母畑の世話でつまらないったらありゃしない。
出して貰ったスイカだけを食べて,私はそのまま祖父母の家すらも出てきてしまったのだ。
友達は皆どこか遠くへ帰省中。
私の行く場所と言えば,この慣れ親しんだ児童館だけだった。
「なにこれ」
手に取ったのは見慣れない本。
古びていたそれは,正確には絵本のよう。
ぴらりと頁を捲ってみる。
右の頁には挿し絵が,左の頁には文字の書かれた左上のみが残り,それ以外は今にも千切れてしまいそうなほど破れていた。
『「むかしむかし,ふ」』
"ふ"……なんだろう。
それ以上の文字は滲んで読み取れず,残りの5文字以降は目を凝らせど無いものはない。
自然と破れてしまったと言うよりは,誰かが故意に破いてしまったようだ。
つい,と視線が右の挿し絵に移る。
小さな子供のシルエット。
片方は恐らく男の子,もう片方は女の子だった。
向かって左に立っている男の子は笑みを浮かべ,右に立つ女の子は泣いているようで,頬には白い雫が描かれている。
短髪の男の子と比べて,ツインテールになっている女の子は印象的だった。
一緒にいて手を繋いでいるのに,まるで対称的な表情を浮かべている。
どうして女の子は泣いているの?
とうして泣いているのに,男の子は笑っているの?
どこか不気味に思えて,私は気になりながらも次の頁を捲ることに躊躇してしまった。
覚悟を決めて,古く不快な感触のする頁を捲ってみる。
あると思い込んでいた頁は,そこにはなく。
挟まっていたのは,封筒の束だった。
中身はどれも,ぎっしりと分厚く,三折のレターが入れられている。
不気味だったのは,そのどれもに文字が少しも書かれていないことだった。
消されたあともなく,電気に透かしてみてもなにも見えない。
最初から文などないのだと分かったけど,腑に落ちることはなかった。
「ねぇ,今井さ」
よく知る職員の今井さんに聞いてみようと振り返る。
ねぇねぇねぇ
知っていますか? ねぇ知っている??
怖い怖い双子のお話。
僕と彼女の,私と彼の
素敵なお話。
とってもとっても素敵なお話。
さぁさあ今から始まるよ。
ようやくようやく始まるよ。
行ってらっしゃい見てらっしゃい。
……『『どうぞ……いらっしゃいませ♡』』
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小学生最後の夏休み。
私,小川 梨乃は児童館へとやって来ていた。
家にいても「宿題は?」と言われるばかり。
祖父母の家に逃げてみても,祖父は草抜き,祖母畑の世話でつまらないったらありゃしない。
出して貰ったスイカだけを食べて,私はそのまま祖父母の家すらも出てきてしまったのだ。
友達は皆どこか遠くへ帰省中。
私の行く場所と言えば,この慣れ親しんだ児童館だけだった。
「なにこれ」
手に取ったのは見慣れない本。
古びていたそれは,正確には絵本のよう。
ぴらりと頁を捲ってみる。
右の頁には挿し絵が,左の頁には文字の書かれた左上のみが残り,それ以外は今にも千切れてしまいそうなほど破れていた。
『「むかしむかし,ふ」』
"ふ"……なんだろう。
それ以上の文字は滲んで読み取れず,残りの5文字以降は目を凝らせど無いものはない。
自然と破れてしまったと言うよりは,誰かが故意に破いてしまったようだ。
つい,と視線が右の挿し絵に移る。
小さな子供のシルエット。
片方は恐らく男の子,もう片方は女の子だった。
向かって左に立っている男の子は笑みを浮かべ,右に立つ女の子は泣いているようで,頬には白い雫が描かれている。
短髪の男の子と比べて,ツインテールになっている女の子は印象的だった。
一緒にいて手を繋いでいるのに,まるで対称的な表情を浮かべている。
どうして女の子は泣いているの?
とうして泣いているのに,男の子は笑っているの?
どこか不気味に思えて,私は気になりながらも次の頁を捲ることに躊躇してしまった。
覚悟を決めて,古く不快な感触のする頁を捲ってみる。
あると思い込んでいた頁は,そこにはなく。
挟まっていたのは,封筒の束だった。
中身はどれも,ぎっしりと分厚く,三折のレターが入れられている。
不気味だったのは,そのどれもに文字が少しも書かれていないことだった。
消されたあともなく,電気に透かしてみてもなにも見えない。
最初から文などないのだと分かったけど,腑に落ちることはなかった。
「ねぇ,今井さ」
よく知る職員の今井さんに聞いてみようと振り返る。
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