ふたご
ーミーンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミーーーン
途端に騒ぎ出す蝉の声に気を取られ,私は外へと視線を移した。
「ねぇ」「ねーね?」
「なに読んでるの」
「絵本読んでるの?」
驚いて私はぐりんと首を回す。
そこにはいつの間にか,知らないそっくりな子供が2人立っていた。
双子??
いくつ年下なのか分からないけど,2人はとても幼い顔立ちで,華奢で小柄な体型をしている。
子供特有の高い声色は,男女の双子それぞれに残っていて,けれどそんなことよりも私は2人の綺麗な顔立ちに見惚れてしまった。
人懐っこい表情を浮かべた男の子と,無理したような表情を浮かべた女の子。
「ボクにも見せて」
私は男の子の裾を握る女の子の右手に目を向ける。
けれど真っ黒な瞳に覗かれて,私は思わず後ずさった。
「私にも」
声だけが明るいまま,女の子も絵本を覗いてくる。
覗いたまま,たぶん封筒に目を止めて,きゅっと唇を結んだ。
「ねえ,名簿……書いた?」
いつからいたのか分からない2人は,きっとつい今しがたやって来たところ。
私が話題を変えるように尋ねれば,2人はこくんと頷いた。
「書いたよ!」
「ボクも。2人で書いたよね」
こくこくと互いを見合って頷く様はとても微笑ましい。
私はどこかほっとして,絵本を見せた。
職員さんが気づいていない時,初めての子供を名簿に誘導するのも,相手をしてあげるのも,私の役目みたいなものだ。
お安いご用と2人のそばに自分から近づく。
「いつのか分からないくらい古いの。私はね,よくここに来るんだけど,初めて見て……どんなお話なんだろうね,これ」
だから見ていたのだと説明すると2人は私の両隣にそれぞれちょこんと座った。
今井さんに話を聞きに行きたかったけど,2人を置いてはいけなくて。
代わりに双子へと質問してみる。
「私,梨乃。2人の名前は?」
「名前,ボクたちの名前は」
「私,青木 花! お兄ちゃんは太陽だよ!」
視線をさ迷わせた男の子。
反対隣から,女の子が手をあげる。
男の子がお兄ちゃんで,女の子が妹。