ふたご
太陽くんが言う。
「直ぐにお兄ちゃんも来てくれるよ」
「「きっと,梨乃ちゃんを守ってくれる。だって,たった1人のお兄ちゃんだから。梨乃ちゃんの事が1番に大好きな,お兄ちゃんだから」」
少しも嬉しくなんて無かった。
寧ろ溢れる涙が止まらない。
「ぅ,ぅえぇぇぇぇぇえん」
こわいよ かなしいよ
お兄ちゃん,助けて。
やだ,やだ……わたし。
わたしは……だれだっけ。
早く来て,助けて,私が誰なのか教えてよ。
"お兄ちゃん"
あなたも……だれ??
この夏が開けたら,お母さんがいつもより盛大にお祝いしようって言ってた。
だから,宿題も早く片付けちゃいなさいって。
おばあちゃんはスイカを切ってくれた。
誕生日前に食べちゃったのは内緒ねって。
"私とお兄ちゃんの誕生日"が,たのしみねって。
そう,いってたのに……
ずいぶん時間が立って,無き張らした顔を上げると。
手を差しのべて,「逢えて嬉しい」というように。
お兄ちゃんが笑っていた。