■Love and hate.
その姿を見て、心底驚いたような顔をする貴史さん。
「は!?おま…何でこんなところにいるんだよ?」
「私がブックストアにいちゃおかしい?」
美人さんは呆れ顔でそう答えた。
「いや…そうじゃなくて。今日はあいつとデートじゃなかったのか?」
「バカね。学生同士のあなた達と違って、真っ昼間からデートなんてできないわよ。向こうは仕事で忙しいんだし。会うのは今日の夜中」
「…ふーん。意外とラブラブなんだな」
「そっちこそ。栞ちゃんと仲良いじゃない。羨ましい」
ちらりと横目で見られ、ドキリとしてしまう。
何か、貴史さんと親しげ…?誰なんだろう。
「栞、こいつ俺の幼なじみなんだよ。洋子っつーの」
「…洋子さん、ですか」
軽く頭を下げるとふふっと微笑まれた。
「邪魔してごめんね。たまたま貴史が目に入って、私の話してるみたいだったから」
「いえ…邪魔だなんて」
「うふふ、可愛いー。でもせっかくデートなんだし2人で楽しまなきゃね。私はこれからアイスでも買いに行くわ」
「分かってんじゃねぇか。さっさと行け」
「…あんたはほんと可愛くないわよね」
洋子さんは貴史さんをぎろりと睨んでから、私に笑顔で手を振って去っていった。
貴史さんに幼なじみがいたんだ…しかもあんな美人の。
今日は驚くことばかりだ。
私は洋子さんが見えなくなったのを確認してから、話を元に戻す。
「もしかしてSOROの社長さんのお母様がいないって話、結構有名なの?」
「いや、そんな有名でもないんじゃね?俺もこの前洋子から聞いて始めて知ったし」
「…洋子さんって物知りなんだね」
そう言うと、貴史さんは苦笑した。
「物知りっつーか、まぁ、当たり前だろ。――洋子は、SOROの社長の許嫁なんだしな」