■Love and hate.


静かな空間に、洋子がすすり泣く音だけが聞こえる。


自然と――…右手が洋子の首に向かった。


ゆっくり力を入れて絞めていく。


ぞくぞくする。洋子の瞳が薄暗く染まっていく。


可愛い、可愛い、可愛い、可愛い、可愛い。


このまま絞め殺してしまいたい衝動に駆られた。


俺のことを考えて泣いている。


何もかも俺で一杯になってしまえばいい。


他の物なんてなくていい。存在しなくていい。


俺の為に泣いて、苦しんで、叫べばいい。




「俺のこと好き?」


こんなことをされても。


どんなに苦しくても。


「ハイは?」


もう声すら出せない様子の洋子が、唇で『 は い 』と伝えてくる。


この女性はもう逃げられない、と思うと心臓の奥の奥が満たされるような気がした。


俺から逃げられない。


辛くても、泣いてしまっても、俺しか見ることができない。


俺を残して、勝手にどこかへ行くことはない。



洋子といると安心する。自分は1人ではないのだと思える。


それが、何故あの子が相手となると落ち着かないのか。心が掻き乱されるのか。


あの子の純粋な部分が、俺の不純な部分を浮き彫りにするからだろう。



―――…あーあ、憎たらしい。





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