■Love and hate.
* * *
少し急ぎながら、約束していた通り喫茶店に足を運んだ。
このお店にも久しぶりに来る。
入り口の外にある洒落た花は別の種類になっていたけれど、ドアを開けた時の鈴の音は以前と変わっていなかった。
中に入ると以前より更に豊富な種類のお菓子が並んでいて、そのすぐ横のカウンター用の椅子も増えていた。
野薔薇と貴史さんは、奥にあるテーブルに既に座って待ってくれていた。
貴史さんは相変わらずの元気一杯の笑顔で、野薔薇は満足そうな微笑で私を迎えてくれる。
2人共更に大人っぽくなり、人の目を引くお洒落さん達だ。
2人はティラミスを、私はブラウニーを注文し、久々の対面を楽しむ。
それぞれの近況についてや、面白かったことを話した。
親が厳しい貴史さんは大学院へ行く前、就職しろと言う親と大喧嘩になり殴り合いまでしたらしい。
長い戦いだったけど自分の希望が通って良かった、なんて笑いながら言う貴史さんを以前よりも格好良く感じた。
野薔薇は教師を目指して今も勉強中だと言う。
私だけでなく貴史さんや野薔薇もそれぞれの道に進んでいる。
変わっていくのは自分だけじゃないんだ。
様々な話をして笑い合った後、野薔薇がふと話題を変えた。
「今日のパーティーには出席するの?」
様々な会社の社長とその家族が集まる、今や完全に民衆の娯楽と化しているあのパーティーが、何年ぶりかの今日また開かれる。
「うん…お父さんが来いって」
「ちょっと、また言いなりになってるわけ?」
「え!?いや、そうじゃないよ。仕事をもっと増やしたいし、今回は私の希望でもあるの。その証拠に、前回は行きたくないって言ったら納得してくれたしね」
多少の諍いは起こったけど、もうお父さんのことを怖いとは思わない。
一人暮らしをすることで両親との程良い距離を取れるようになったし、前よりもずっと家族らしくなれたように思う。家族と言っても、私たちなりの家族だけど。
「ふーん。でも、パーティーなんか出なくてもRu-juにいる限り仕事くらいわんさか回ってくるんじゃない?」
「最近勢いづいてるしなぁ、Ru-juもSOROも」
「あぁ、そういえば。SOROの社長さんってもう結婚したの?その手の話全然聞かないんだけど」
「何言ってんだよ、あの社長と洋子との婚約ならとっくの昔に破棄されただろ?」
「え!?」
話していた野薔薇よりも驚いたのは私で、思わず驚愕の声が出てしまった。