■Love and hate.
あたしの大好きなパパとママは、毎日あたしに沢山の愛情を注いでくれる。
パパとママもお互い仲が良いし、愛情を注ぎ合ってる。
2人とも仕事で忙しいけど、あいた日はいつも家族3人で出掛けたり家で一緒に映画を観たりする。
ママはどんなに忙しくてもあたしのご飯だけは用意してくれる。
超急いでつくった感満載の昨日の夕食の残り物と一緒に握っただけのおにぎりの時もある。
どうしても忙しくてママがつくれない時は、パパが簡単な物をつくってくれる。
パパのつくる料理はまずい。
ママの美味しい料理をいつも食べてるからそう思うのかもしれないけど、それにしてもまずい。
卵焼き1つとってもパッサパサなうえに味がしない。
こればっかりはあたしの方がうまいんじゃないかって思う。
でも頑張ってつくってくれていることを分かっているから、あたしはママの美味しい卵焼きもパパのまっずい卵焼きも好き。
ママが寝坊した時、パパはあたしにフレンチトーストをつくってくれる。
これは美味しい。
ママの料理に匹敵するくらい美味しい。
ひょっとしたらパパは他の料理をつくらない分フレンチトーストばっかつくって生きてきたんじゃなかろうか。
ママを起こさないのかって聞いたら、仕事に行く直前にママの寝顔が見たいからわざと起こしてないってデレデレした顔で言う。
ママの写真くらいタブレットに一杯入れてホーム画面にまで設定してるくせに、まだ見たいらしい。
あたしの写真も事あるごとに撮ってはニヤニヤしてるから、ほんともうどうしようもない。
そのせいで予定に間に合わなかった時怒られるのは自分なのに、そう言うと「起こさないのにはまだ理由がある」なんて真顔で反論してくる。
寝起きのママはいつも慌ただしくて、一度起きてしまったら行ってきますのチューをする暇がないって真顔のまま言うパパは、あたしにもいつも行ってきますのチューをしたがる。
夜は帰ってくるのが遅くてただいまのチューができないから、その分行ってきますのチューをしたいらしい。
もう父親にキスしてもらうような歳でもないのに、そこだけは意地でも譲らない、どうしようもない親ばかだ。
パパは程良い時間になると鼻歌を歌いながらママを起こしに行く。
案の定「何で起こしてくれなかったの!?」だの「ちょっ…キスなんかしてる暇ないから!ばか!」だの焦った声で言うママは慌てて寝室を飛び出してきて、その後に続いて出てくるパパは怒られてるにも関わらずとっても幸せそうな顔してる。
パパはあたしとママが大好き。
リビングに入ると真っ先に私の方に来て「おはよう」って挨拶してきて「朝ご飯ちゃんと食べた?」とか「お弁当の用意はしてあるから、すぐつくるね」とか言ってくるママも、あたしが大好き。
お弁当にパパの好物を毎日必ず1つは入れてるから、なんだかんだでパパのことも大好きなんだと思う。
ママはあたしに色々なことを教えてくれて、パパはあたしが間違ったことをすると叱ってくれる。
この間ママと喧嘩した時、ママに「だいきらい」なんて思ってもない酷いことを言っちゃったけど、パパはあたしの本当の気持ちを把握したうえでそんなこと言っちゃダメだって叱ってくれた。
喧嘩したって良いと言う。
反抗したって良いと言う。
だけど、傷付けてしまったと少しでも思ったら、絶対に謝って、その後そんなことを絶対にしないようにして、それまで以上に優しくすべきだと言う。
パパは誰かがママを傷付けることが何より許せないらしい。
だから、いつもより長く怒られた。
私はママにちゃんと謝って、それ以来「だいきらい」っていう言葉は誰に対しても使っていない。
あたしは、高校生になったら家から遠い学校へ通うことになっている。
他の子はみんな地元の高校に通うみたいだったし、無理なお願いだって分かってたうえでその高校を受験したいって頼んだ。
少し待ってくれって言われて長い間返事がなかったから、やっぱり駄目かと思った。
でも、その間パパとママは交通費や学生寮のことを調べてくれていたらしくて、少し遅めの了承を得ることができた。
ずっと私の希望を通そうとしていてくれたことが嬉しかった。
この間ママは、高校生の時パパから貰った手紙の話をしてくれた。
何でも、ママはその手紙の最後の言葉がお気に入りで、誰にも教えたくないんだとか。
その言葉は、パパからママへの最初の本当の告白だったらしい。
あたしにも教えてくれなかった。
あたしも将来良い人と結婚して、ママとパパみたいな夫婦になりたいって思う。
そして、あたしがママとパパに与えてもらった以上の愛情を自分の子供に注ぎたいと思う。
あたしは、あたしの家族が大好きだ。
■Love and hate. 【完結】