御曹司は幼馴染を溺愛して蕩けさせたい
そして今グラスを拭いている俺の前には馴染みの絃。
絃も維織も兄妹揃って暇なんか?
「なぁ。俺たちくらいじゃね?」
ははは。何もねぇもんな。
絃が酒を煽りながら愚痴をこぼしている。
ジッと絃が俺を見る。
「なぁ。奏翔お前、いつ維織に言うの?」
ん? なんだっけ?
「何を?」
「は?」
絃は口をあんぐり開けて俺を見る。
俺も何のことかわからないから絃を見る。
そしてお互い黙ったまま目を合わせて瞬きを繰り返した。
「俺、維織に何か言い忘れてる事なんてあったか?」
そう言うと、絃は一瞬白眼を向いて盛大にため息を吐いた。
「なるほど。そういう感じね。おっけ」
そう言ってまた酒を煽る絃。
ちょうどその時他の客に呼ばれ、なんの事をいってるのかわからないまま絃の席の前から離れたのだった。