御曹司は幼馴染を溺愛して蕩けさせたい
この匂い。
奏翔だ。

私は目を閉じたままギュッとしがみつく。

「まだ熱あるな」

そう言ってベッドに下ろされた。

「奏翔…寒い」

「待ってろ」

すると間も無く布団がかけられた。

それでも尚ブルブルと寒気が襲ってくる。

「寒い…ギューして…」

奏翔はいつの間にか着替えたのかスーツじゃなかった。

着替えてから来たのか。

すると奏翔は黙ってベッドに入ってきて腕枕をするとすっぽりと私を抱え込んで包み込むように抱きしめてくれた。

奏翔の体温が徐々に染み込むように伝わってくる。

「あったかい」

気持ちいい。
落ち着く。

奏翔の体温と、僅かに香る柔軟剤の匂いに包まれ朦朧とする意識の中、幼い頃の記憶が蘇る。

昔も確か同じような事があった。

熱を出した私をこうして抱きしめてくれたっけな。
そんな優しい奏翔が大好きだった。

「大好き…奏翔」

そして私はそのまま意識を手放した。

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