御曹司は幼馴染を溺愛して蕩けさせたい
なのにまだこんなの持ってんのか?

どういうつもりで?

「かな、と…」

すると維織に名前を呼ばれ俺はそっとその缶をしまった。

まず今は維織の看病が先だ。

俺は維織の側へしゃがむ。

「どした?」

くそ。
思い出したら急に可愛く見えてきた。

頭を撫でてやる。

維織はそっと布団から手を出して撫でている俺の手を握り自分の頬に当てて微笑んだ。

「冷たくて気持ちいい」

その瞳は熱で浮かされうるうると涙ぐんでいる。

「寝とけ」

そう言えば維織はニコッと微笑み目を閉じた。

「好きだよ…奏翔」

そう言って。

俺はバッと立ち上がる。

これは何かの間違いだ。
熱によっておかしくなってるだけだ。
絶対起きたら覚えてないやつに決まってる。

幼馴染としてって事だろうどうせ。
< 71 / 283 >

この作品をシェア

pagetop