絶え間ない心変わり
1話
<視点:凪>
右の頬を打たれて、相手の憎悪の目を見かえす。
「急に何?」
久しぶりに会いたいって言うから、飯を食ってホテルに入ったらこの展開。
寝てるうちに俺の携帯を盗み見たのか、唐突に罵声と共に揺り起こされた。
「私の他にも会ってる女いるんでしょ」
「いるけど。言ってなかったっけ?」
(いまさら何言ってんだよ)
アルコールの酔いと眠気がまだ半分残っていて、痛みも衝撃もぼんやりしている。
「……やっぱりそういう人だったんだ」
「は?」
「相手は誰でもいいんでしょ。期待した私がバカだった」
この展開を最初から知っていたというように、彼女は脱いであった服を着直して髪を素早く整えた。
俺はまるで寝起きの猫だ。
馬鹿みたいに無防備な状態でベッドの上にいるけど、彼女は触れ合った事実なんかなかったみたいに社会人の姿に戻っている。
「帰るの?」
「ていうか、もう一生会わないから。連絡先も消す」
(デジャブ……)
何度こういう展開があったんだろう。
いい加減、学習しろよと俺も思う。
人間との交わりなんて、こんな展開しかないじゃん。
将来がどうとか、過去がどうとか。
今が幸せならいいって言える人っていないんだよな。
(寝言みたいに幸せだって言ってたのは、嘘だった?)
俺がこの女性に与えたものに関しては、まるっきり気づいてもらえていないみたいだ。
さすがに少しは言い返してみたくて、俺は口を開いた。
「なんで数ヶ月会ってなかったのに唐突に連絡してきたの。で、なんで唐突にこの扱いなわけ」
俺はいつもわからない。
寂しいから相手をしてほしいと、願ってきたのは相手なのに。
心から相手をしてやると喜ぶくせに。
突然、独占欲の塊になって俺に憎悪を向けてくる。
人が変わっても、相手が人間であればパターンはほぼ一緒だ。
だから理不尽だなと感じて質問するけれど、この問いはさらなるこじれを生むだけなんだ。
「数ヶ月我慢してたんだよ。ナギくんが忙しいっていうから」
「いや、嘘は言ってない。普通に忙しかったよ」
「だから、連絡するのを遠慮して我慢してたんだってば!」
ヒステリックな声が鼓膜を震わせて、嫌な気分に拍車がかかる。
感情的になったら終わりだとわかっていても、さすがにうんざりしてくる。
「我慢して欲しいっていつ頼んだ? それに、付き合いはレオナだけだって言ったことないよね」
社会的にも結婚してない俺には、彼女にここまで責められる理由はない。
あの紙切れにサインすることは、想像を絶する責任を負うことだって俺は知ってる。
妻も子供もきちんと幸せにできる状態じゃなきゃ、そんな約束はできない。
俺にはそんなの無理で……だから結婚はしないって伝えてあるのに。
「ひど……」
レオナは唇が震え、目には涙を溜め出した。
「ふ、普通……あんなに愛を語っておいて、他にも女がいるなんて思わないでしょ」
「愛を語るのは1人じゃなきゃいけないって決まりあるんだ?」
「……」
とどめを刺してしまったようだ。
ひどく傷ついた顔をすると、レオナは深呼吸してから涙を拭った。
「もういい」
強気な目で俺を睨む彼女の顔。
やっぱりこの人のことは嫌いじゃないって思う。
でも、俺の足りないものを彼女ひとりで埋めることはできない。
だから“レオナだけでいい“とは言えない。
そんな俺の気持ちは理解不能みたいで、彼女はやっぱり二度と会わないと言って去って行った。
右の頬を打たれて、相手の憎悪の目を見かえす。
「急に何?」
久しぶりに会いたいって言うから、飯を食ってホテルに入ったらこの展開。
寝てるうちに俺の携帯を盗み見たのか、唐突に罵声と共に揺り起こされた。
「私の他にも会ってる女いるんでしょ」
「いるけど。言ってなかったっけ?」
(いまさら何言ってんだよ)
アルコールの酔いと眠気がまだ半分残っていて、痛みも衝撃もぼんやりしている。
「……やっぱりそういう人だったんだ」
「は?」
「相手は誰でもいいんでしょ。期待した私がバカだった」
この展開を最初から知っていたというように、彼女は脱いであった服を着直して髪を素早く整えた。
俺はまるで寝起きの猫だ。
馬鹿みたいに無防備な状態でベッドの上にいるけど、彼女は触れ合った事実なんかなかったみたいに社会人の姿に戻っている。
「帰るの?」
「ていうか、もう一生会わないから。連絡先も消す」
(デジャブ……)
何度こういう展開があったんだろう。
いい加減、学習しろよと俺も思う。
人間との交わりなんて、こんな展開しかないじゃん。
将来がどうとか、過去がどうとか。
今が幸せならいいって言える人っていないんだよな。
(寝言みたいに幸せだって言ってたのは、嘘だった?)
俺がこの女性に与えたものに関しては、まるっきり気づいてもらえていないみたいだ。
さすがに少しは言い返してみたくて、俺は口を開いた。
「なんで数ヶ月会ってなかったのに唐突に連絡してきたの。で、なんで唐突にこの扱いなわけ」
俺はいつもわからない。
寂しいから相手をしてほしいと、願ってきたのは相手なのに。
心から相手をしてやると喜ぶくせに。
突然、独占欲の塊になって俺に憎悪を向けてくる。
人が変わっても、相手が人間であればパターンはほぼ一緒だ。
だから理不尽だなと感じて質問するけれど、この問いはさらなるこじれを生むだけなんだ。
「数ヶ月我慢してたんだよ。ナギくんが忙しいっていうから」
「いや、嘘は言ってない。普通に忙しかったよ」
「だから、連絡するのを遠慮して我慢してたんだってば!」
ヒステリックな声が鼓膜を震わせて、嫌な気分に拍車がかかる。
感情的になったら終わりだとわかっていても、さすがにうんざりしてくる。
「我慢して欲しいっていつ頼んだ? それに、付き合いはレオナだけだって言ったことないよね」
社会的にも結婚してない俺には、彼女にここまで責められる理由はない。
あの紙切れにサインすることは、想像を絶する責任を負うことだって俺は知ってる。
妻も子供もきちんと幸せにできる状態じゃなきゃ、そんな約束はできない。
俺にはそんなの無理で……だから結婚はしないって伝えてあるのに。
「ひど……」
レオナは唇が震え、目には涙を溜め出した。
「ふ、普通……あんなに愛を語っておいて、他にも女がいるなんて思わないでしょ」
「愛を語るのは1人じゃなきゃいけないって決まりあるんだ?」
「……」
とどめを刺してしまったようだ。
ひどく傷ついた顔をすると、レオナは深呼吸してから涙を拭った。
「もういい」
強気な目で俺を睨む彼女の顔。
やっぱりこの人のことは嫌いじゃないって思う。
でも、俺の足りないものを彼女ひとりで埋めることはできない。
だから“レオナだけでいい“とは言えない。
そんな俺の気持ちは理解不能みたいで、彼女はやっぱり二度と会わないと言って去って行った。
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