絶え間ない心変わり

「……めんどくせー」

女性を傷つけて、泣かせて、このセリフはないだろう。
客観的に自分でもそう思う。
でも本音だから仕方ない。

もう、自分の中の欠けたものを外で埋めるのはやめよう。
毎回そう思うのに、一定期間を置くと耐えられない孤独が襲ってくる。
だから同じような孤独を抱えている人に誘われると断れない。
その繰り返しは26歳になる今も続いていて、正直しんどいし、こんな生き方、限界だとも思う。

「愛ってなんだ?」

今までも抱いていた陳腐で不毛な問いを、俺はこの日を境にさらに強めていた。



次の日は最悪に頭が痛くて、仕事なんかできそうになかった。
人間関係で揉めやすい自分は早々に会社員になることを諦め、在宅でライターの仕事をしている。

発注のあったテーマを取材をして、雑誌やウェブ用に記事を書くのが主流だ。
今は10社くらいを取り引き相手になんだかんだ仕事は順調だ。

「……頭いてえ」

マンションに戻ってからもビールを飲んでしまい、結局寝たのは朝の5時だ。
レオナとの別れはそれなりに応えているようで、自分の軟弱さにため息が出る。

(こんな生き方、もう本気でやめよう)

異性との付き合いに辟易してきた感がある。
自分の中の足りないものを、空虚な人間付き合いで埋めるのをやめるべきなんだろう。
無人島で自活できたら、それが一番合っているのかもしれないが、そういうサバイバル術も心得がない。

「あー……10時から打ち合わせ入ってたんだっけ」

水を飲みながら、カレンダーを見て予定をぼんやり思い出す。

今日は花言葉についてのコラムを書くために、イラストレーターと打ち合わせする日だった。
とりあえず二日酔いをリセットしないと話にならないから、早々にチャットツールにて時間の調整をしてもらう。
数分で午後に延期OKの返事をもらった。

口頭で話さなくていいという時代になってから、こういうのは楽だと感じる。
相手が男性か女性かもわからない時もあるし、年齢も相手から公表されない限りはわからないことも多い。
お互いそんな曖昧な関係なのに、しっかり成果物のやり取りは行われていて……

(まあ……楽だからいいよな)

たまに人間と交流してるのか、宇宙人と交流しているのかわからなくなる。
そんな時にふと寂しさというか、人間としての何かが足りないって感じる。
だからタイミングよく誘われると乗ってしまうわけだが、それが周囲の意見としては「サイテー」となるらしい。

人間が作ったルールはとてもよく出来ていて、小さなボロは「常識」っていうぼんやりしたパテで埋められるようになってる。

みんなが言ってる、みんながそうしてる。だからそうする。
はみ出すのは怖い。
目立たずにみんなと同じことをしていた方が安全だ。

「なんで?」という問いかけに返ってくる答えは、だいたいこれだ。
答え方はもっと巧妙にそれらしくデコレートしてあるが、結局はこういうことなんだ。
みんな「人間の圧」に怯えてる。
変な話、仲間の目に怯えてるってことだ。

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