夏の夜空に消えてく花火
「ナツキ、好きだよ」
「な、なに急に?」
「最近、言ってなかったなって思って」
「わ、私も好き……」
俺達は手を繋いで歩調を合わせて歩き出した。
きっと、これからも変わらない――。
この小さな町で空を見上げれば、あの時のことを思い出す。
夏の夜空に火を灯し消えていく花火のように。形がなくて消えてしまっても、時がたって色褪せても、確かに存在した形の記憶。
叶うことの無かった、交わることの無かった思いだからこそ、綺麗なまま記憶の中に刻まれるんだ。
─fin─